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台湾アップデートセミナー第4回 Food Taipei (台北国際食品展覧会)に見る日本企業のチャンス (講義録)
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このレポートは、2022年2月にオンラインセミナーで講演した内容を文章にしたものです。

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今回は台湾最大級の食品関係の展示会である「Food Taipei」の話とそこに見える日本企業のビジネスチャンスについて皆さんと考えていきたいと思います。

 

 

 

Food Taipeiの展示内容



Food Taipeiですが、2020年と2021年は新型コロナの関係で12月に延期して開催しています。またここ数年は食品関連の他の展示会との共同開催(Mega Show) となっています。



コロナ前の2019年に比べるとさすがに規模は縮小していますが、台湾では有数規模の食品関係の展示会であることには変わりません。南港展覧館2館の1階と4階が展示場のフロアになっているのですが、それをほぼ全部使っています。

 

 

 

写真で見るFood Taipeiの様子


入り口あたりです。左側に日本パビリオンがありますが、ここについては後でお話しします。会場には大勢の来訪者がいることが分かるかと思います。



台湾モスバーガーのブースです。すぐ注文できることもあって大勢の人でにぎわっています。ちなみに台湾のモスバーガーは台湾の大手家電・重電メーカーである東元電機グループとの合弁で運営されています。



こちらはアフリカのエスワティニ王国です。昔の名前のスワジランド王国の方で覚えておられる方もいらっしゃる方も多いかもしれません。台湾と正式な国交を持っている国の一つです。



こちらはリトアニアのブースです。最近台湾とかなり親密な関係になっていることがニュースで取り上げられたためか、ブースには多くの人が集まっていました。



こちらはカナダのブースです。



こちらは台湾の釈迦頭(しゃかとう、バンレイシ)と蓮霧(れんぶ)のブースです。どちらも台湾では良く植えられている果物なのですが、輸出先が中国大陸に集中している上、最近では急に輸入を差し止められたりと安定した輸出に課題があるため、他の輸出先の開拓に力を入れているように見えます。

 

 

 

低調だった日本パビリオン



毎年Food Taipeiでは日本パビリオンはかなりの面積が割り当てられており、2021年も入場証を交換する4階の入口近くという良い場所が割り当てられたのですが、十分に活かなかったようです。



ほとんどのスペースに出展がなく、商談スペースとなっていました。



パビリオン案内図を見ると、出展スペース(灰色以外)が少ないことが分かるかと思います。



こちらは割と盛り上がっているタイミングを待って撮影したものです。日本の食品に興味を持つ台湾の方は多いですが、何せブースの数が少なすぎました。全体的にはかなり寂しい雰囲気に感じました。


もうかわいそうで撮影できなかったのですが、撮影日が会期の最終日のせいだったのか、椅子に座ったり、カウンターに寄りかかってスマートフォンを見ているスタッフも目立ちました。


日本ブースの問題点


私はこういった低調な日本ブースの原因は新型コロナ前からあり、新型コロナの影響で明確になったのではないかと思っています。いくつか挙げてみます。


日本語・英語のパンフレットしか用意していない、また準備した枚数が少なくて気軽に渡せないブースも結構見かけました。さらに中国語ができる説明員を余り置いていない、ひどい時は複数ブースで共有という事例も見かけました。


せっかく展示会に出展しているのに、お客さんが多くブースに来ると処理しきれない準備不足な状態。こういったブースが新型コロナ前から結構あったように思います。


悪い意味での「現地主義」に陥っている可能性


色々ブースを出している人に話を聞く限り、準備不足な状態になっているのには、例えば以下のような「自分が行けばなんとかなるだろう」という甘い見通しが背景にあるのではないかと思います。

  • 準備不完全でも、日本人が現地に行けば何とかなるだろう
  • 資料の準備が甘くても、日本人が通訳を通して説明をすれば良いだろう
  • 説明員兼通訳が少なくても日本人が行けばいいだろう


まず中国語も台湾語もできない日本人が1人でブースにいても出来ることは何もありません。チラシくらいは配れるかもしれませんが、来訪者に中国語で話しかけられると対応できませんし、話しかけることもできません。


また全ての来訪者に通訳を通して説明をすると2つの言語で同じことを話すことになりますから、2倍以上の時間がかかります。


台湾市場の可能性の判定が甘い


事前にちゃんと台湾市場を調査していないのではないかという出展内容が少なくありませんでした。例えば、台湾は自炊で凝った料理を作る文化ではないのに、自炊を前提とした商品しか出展していないブースなどです。


「台湾でいける!」と思った理由もよくよく聞いてみると甘いように思います。例えば「自分の知り合いの台湾の方に試食してもらったら好評だった」、「試食会で好評だった」などです。そもそも当事者の目の前で「これは台湾で売れないですね」なんて言う人は少ないと思います。


最終的には売れるという目標がある以上、単純に「美味しい」ではなく、例えば「競合製品の✕倍の値段でも買いたい」ほどの美味しさなのかが本当のポイントだと思います。

 

 

 

台湾市場における乳製品の可能性



では台湾市場における可能性はどんなところにあるのでしょう?現在注目を集めている市場としては乳製品市場があります。例えば米国カリフォルニア・ミルク協会は複数年連続してFood Taipeiに出展しています。



実は台湾は気候的に余り乳牛の飼育に向いていないのか、余り生乳の生産量が多くなく、またコストも高くなっています。



実際成分無調整の牛乳パックを見ても台湾は日本の倍近い値段になっています。


気候やコストの関係で台湾の牛乳生産は常に不足しており、台湾WTO加入、とくにニュージーランドとの自由貿易協定締結後、NZからの乳製品輸入が急増しています。また最近は米国からの輸入も急増しています。


例えば、台湾政府による2019年1-7月における乳製品輸入のシェア・TOP4は、ニュージーランド27.0%、米国25.1%、豪州9.8%、仏5.1%でした。本当はここに日本が入っても良いと思うのですが、上手くチャンスがつかめていない感じがあります。

 

 

 

台湾の外食市場への売込



以前出展していたこのブースは台湾中部の台中で屋台を出している米国人が「本物の米国のピザ」を売り物に会場で焼きたてを販売しており、かなりの客を集めていました。しかし狙っているのは個人客ではなく、飲食店向けで、冷凍ピザを卸売することを狙っていました。


台湾では外食の比率が高く、上記のグラフを見ると毎日1回は外食する人の割合が25%に達します。また台湾國家衛生研究院による2015年の調査では、外食率は以下の通りです。
 

中高生の外食率:朝80-90%、昼85-90%、夜65-70%
成人 の外食率:朝55-65%、昼47-62%、夜27-33%


また私の感覚ですが、台湾は毎回自炊で凝った料理を作る文化ではないと感じています。そういう意味では自炊で凝った料理を作る人向けの商品はより狭い市場を選択している可能性が高いように思います。

 

 

 

B to B、部品に徹する



こちらのブースは2020年も2021年もブースでラーメンを作って販売しており、人気を集めていました。このブースは日本の食材を取り扱っている台湾企業が出展しており、狙いはラーメン店舗への日本の食材の卸売です。こういった台湾企業の方が日本ブランドの売り込み方が上手いと言えます。


全部日本製、オールジャパンではコストで勝てない場合も多いですし、一部の材料だけを売るのも日本ブランドは有効です。例えば、以下のようなものがあります。

  • 和牛 (高級店中心、台湾では牛肉はほとんど輸入)
  • 魚介類 (日本産は強いし、台湾にはないものも多い)
  • 抹茶(宇治も静岡も有名)
  • 沖縄黒糖
  • バナナクリーム
  • イチゴパウダー

 

台湾市場におけるスイーツの可能性



台湾では日本と比べるとスイーツの値段がかなり高いです。同じものが倍ちかい、場合によっては倍以上の値段でも売れていることを見ると、日本から進出する場合も可能性がかなり高いと思います。

 

 

 

福島への風評被害ようやく第一歩を踏み出す


事前に質問もあったのですが、2022年02月07日の報道によると、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県は輸入禁止、他の都道府県でも県単位の産地証明などが求められていたのですが、緩和の方向に向かうようです。


(参考) https://www.rti.org.tw/news/view/id/2123958

 

 

 

 

食品周辺のビジネスチャンス



ここ数年はFood Taipeiは以下の通り、食品関連の展示会との共同開催になっています。

  • Food Taipei (台北國際食品展覽會)
  • Foodtech Taipei (台北國際食品加工機械展)
  • Bio/Pharmatech Taiwan (臺灣國際生技製藥設備展)
  • Taipei Pack (台北國際包装工業展)
  • Halal Taiwan (台灣國際清真產品展、ハラール)
  • Taiwan International Hotel, Restaurant & Catering Show (Taiwan HORECA、台灣國際飯店暨餐飲設備展)


レトルトや冷凍食品のOEM(製造代行)、包装機械、紙製ストローなどの食器類、ハラール認証などのブースもあります。例えば日本でタピオカミルクティーなどの台湾の食べ物を売る店を出したい場合は、こういうところで知り合って、OEMで食材を作っておろしてもらうなどの手があるわけです。

 

 

 

自社にとってのビジネスチャンスとは?


本日の話は以上になります。「こういった場合はどうか?」など、個別の質問はこの場で私の感覚でお答えするのは不正確かもしれません。また展示会の具体的な出展方法などについては細かい話になります。


こういった個別の相談は是非IDEC横浜の各種相談制度をご利用ください。横浜市内の中小企業であれば、台湾市場調査なども含めて一定の範囲までは無料で利用が可能です。是非海外進出に興味がある横浜の中小企業からのご相談をお待ちしております。


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台湾サポートデスク
Pangoo Company Limited 代表 吉野 貴宣


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公開日時
2022年3月19日(土)