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台湾最大の建材関係展示会・見本市、TaiPei Building Show 2023 レポート
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台湾最大の建材関係展示会・見本市、TaiPei Building Show 2023 レポート

TaiPei Building Show 2023

今回は台湾最大の建材関係展示会・見本市、TaiPei Building Show 2023 (2023/12/07~2023/12/10)の様子を紹介する。主に台湾への建材の売り込みを考えている方向けに解説をしている。参考になれば幸いである。

開催規模・来場者数

TaiPei Building Show 2023 フロアマップ
TaiPei Building Show 2023 フロアマップ

主催者側発表では、2,373小間、498社の出展があった。台北南港展覽館のホール1のほとんどがブースで埋まった。

TaiPei Building Show来訪者
TaiPei Building Show来訪者

TaiPei Building Showは新型コロナ(COVID-19)の影響をあまり受けなかった展示会である。一つは開催期間が行動規制が緩和された時期であったこと、また筆者が展示内容を実際に見る限りTaiPei Building Showの出展者の多くは台湾内への販売を主眼にしていることも理由の一つとしてはあると思われる。

台湾内での建材消費市場は8,000億台湾元に及ぶと推定されている。仮に1台湾元=4.5日本円で計算すると3.6兆円であり、かなりの規模である。実際住宅など建設はまだまだ盛んであるし、住宅の内装などに関してはかなりお金をかける人が多い印象を受ける。

展示会の内容

日本の大手建材メーカー
日本の大手建材メーカー

出展対象となる製品は以下のような出展エリアに分かれる。先述の通り家具など、内装・インテリア関係の展示も多い。

  • グリーン建築・グリーン建材:
    • 環境に優しく、持続可能なグリーン建築
    • 省エネルギー、健康、再生可能などを備えた高機能建材
    • 公害防止、水処理、騒音防止、空気浄化、ゴミ処理関連のエコロジー(生態工学)な施工方法
    • 環境保護への取り組みなどに関する展示
    • その他
  • 総合建材:
    • 建築施工
    • 住宅リフォーム
    • 建材生産
    • 公共施設設備
    • 屋内外建材
    • システムキッチン
    • 園芸、庭園
    • その他各種建材
    • メディア、書籍、情報、サービス
    • その他
  • 家具・室内装飾品:
    • 家具
    • ベッド、寝具
    • オフィス家具
    • その他家具全般
    • 室内装飾品
    • その他
  • 照明装飾:
    • 屋内外照明器具
    • 省エネランプ
    • 照明制御システム
    • 各種照明関連機器
    • その他
  • バスルーム・キッチン用品:
    • バスルーム機器およびその付属品
    • キッチン用品およびその付属品
    • 給湯器
    • ガス機器
    • キッチン用品
    • その他
  • 床壁材及び装飾建材:
    • 各種石材
    • 石材鉱物製品
    • タイル
    • 屋根瓦
    • その他屋内外関連の装飾及び建築資材
  • ドア、窓、スマート建材:
    • 各種ドア・窓
    • シャッター
    • 鍵、ロック
    • 取手・ハンドル
    • アクセス制御システム
    • 防火装置
    • カーテン
    • その他

台湾のニーズを踏まえた、日本からの木材の売り込み

日本の木材の売り込み
日本の木材の売り込み

日本から大手建材メーカーに並んで、よく出展があるのが、日本の国産材に関する展示である。

実は台湾では200万ヘクタール以上の森林があり、台湾全体の58%を占めるが、森林保護のため、台湾で生産される木材は決して多くない。台湾で使われる木材は每年平均600-900万立方メートルであるが、その自給率は僅か0.5%ほどである。

木材のほとんどは輸入に頼っており、マレーシア、インドネシア、タイ、豪州、中国、米国、カナダなどが主な輸入元である。

日本の杉材などは決して安くはないが、量が非常に少ない台湾産の木材よりは安く、また台湾では日本統治時代の家屋も修復されて使われており、またCO2吸収などのエコに関しても木材は注目されている建材のため、売り込む余地があると考えられているのであろう。

台湾に限らないが、どの国への売り込みであっても、事前の市場調査は不可欠である。例えば、台湾の森林の多さをもって、輸入木材は売れないなどと直感で結論付けないことが重要である。

台湾の「緑建材(グリーン建材)」

緑建材(グリーン建材)
緑建材(グリーン建材)

出展エリアの中でも特に関係する国内外の認証等の証明が要求されるのが、「緑建築・緑建材(グリーン建築・グリーン建材)」のエリアである。

台湾の「グリーン建材」は規定事項を満たすことを認証された建材である。「グリーン建材」の規定には原材料の取得、生産・製造、製品の輸送や使用など様々な段階で環境汚染を引き起こさないことや、人体や環境に危険を及ぼす可能性のある有害物質に関する制限などがある。

環保(エコ)、安全、健康を訴求
環保(エコ)、安全、健康を訴求

緑建材の製品分類は以下のように「健康」、「生態(エコロジー)」、「再生」、「高機能」に分けられる。

  • 健康緑建材:
    (1)低拡散(ホルムアルデヒドなどの有機化合物)、(2)低汚染、(3)低臭
  • 生態(エコロジー)緑建材:
    (1)温室効果抑制、(2)オゾン層破壊抑制、(3)台湾産建築材料使用、(4)省資源、省エネルギー
  • 再生緑建材:
    (1) 再循環、(2) 再利用、(3)廃棄物減少
  • 高機能緑建材:
    (1)高耐久性、(2)メンテナンスフリー、(3)高断熱性、高防音性

例えば塗料や木材などでシックハウス症候群の原因物質の一つであるホルムアルデヒドの発散抑制に関しては「健康」に分類される。また木材製品は「生態(エコロジー)」での認定も考えられる。

「グリーン建材」は建築物の「グリーン建築」の認定において一定比率を使う必要がある。また一定規模以上の公共建築については「グリーン建築」が求められることから、台湾の公共建築において自社の建材の利用を考えている場合は建材に対する「グリーン建材」は必須ということとなる。

展示会の入場者の属性

TaiPei Building Show 2023 入場者属性
TaiPei Building Show 2023 入場者属性

TaiPei Building Showでは毎年入場者の属性を公開している。日本から出展する場合を想定して、どんな入場者が来るのか、筆者の意見を以下にまとめた。

建築士

TaiPei Building Showが台湾の代表的な建材関係の展示会になっているのは規模だけではない、主催団体の中に「中華民國全國建築師公會」という台湾の建築士の団体があり、建築士向けのセミナーやイベントなども会場で行われる。また面白いのは家族も含めて、建築士には軽食や飲み物、特別なノベルティグッズが準備されていることである。こうした主催者側の努力もあってか、会期中はかなりの数の建築士が足を運ぶ。

建築士は入場証も一般とは色などが異なりすぐにわかるため、各ブースもかなり熱心に声をかける。建築士は実際の案件で建材を選定する際に影響を与える立場にあるからである。ただ筆者が見る限り、建築士本人はこういった売り込みがかなり多いせいか、余り名刺を渡したがらないなど、自分の連絡先などを提供することには消極的な事が多い感じがある。

ただ建築士も色々な建材について情報を入手したいし、勉強したい立場でもある。よって相手の立場に立った情報提供を行うことが重要だと思う。これは他の属性の入場者も同様である。

インテリアデザイナー・内装業者

台湾で開業している建築士は台湾政府の統計(2023年6月末時点)で4,727人だが、報道によると資格を持ったインテリアデザイナーは3万人超、認可を受けた内装業者は1.4万社近く、内装業従事者は20万人超とのことで、台湾における内装・インテリアに対する需要の高さをうかがうことができる。一見すると古いマンションやアパート、商業ビルでも内装には徹底的にこだわるオーナーが多い。

また改装については、筆者が見るところ、屋根や壁などの外装の部分も含めて、インテリアデザイナーが主導する案件が多いように思う。恐らく建築士事務所と比べて数が多く、敷居が低く、相談しやすい部分もあるだろう。インテリアデザイナーも実際の案件で建材を選定する際に影響を与える立場にある。

専門施工業者

瓦、タイル張り、塗装、空調など分野を特化した業者を「専門施工業者」と筆者は呼んでいる。台湾の建築主は建材だけでなく、その建材を正しく施工してくれる業者を紹介できるかについて尋ねてくることが多い。こういったニーズに対応する業者である。

こういった専門施工業者の多くは台湾全土(少なくとも台湾本島全域)で案件を請け負っている。台湾本島の大きさは大体日本の九州に相当し、そこまで広くはなく、多少本拠地より遠い場所での案件でも積極的に案件を取ることが多いようである。

実際に案件を施工しているだけあって、自分たちが扱っている建材についてはそれなりに詳しいことが多い。

輸入代理店

展示会を見ると台湾製以外の輸入建材を扱っているブースがかなり多い。日本と比べて市場はそこまで大きくはなく、国産品だけではバリエーションが乏しいためであると考えられる。もちろん御社製品を輸入してくれる可能性もある。

建材メーカー

台湾の建材メーカーが既存の販売ルートを活かし、また製品ラインナップを増やすために海外製品の輸入代理店を行うことがある。自社製品と輸入製品のすみ分けによっては先述の輸入代理店の立場に近くなる。

建築主(施主)

個人の多くは建築主(施主)として、建築業者・建設業者も、マンションやビルや別荘などの分譲物件を建設して販売する建築主としての立場で展示会に来ていることがある。建築主の立場で自分の物件を少しでも良くするために、建材の情報収集を行っていることが多い。

建築士やインテリアデザイナー、専門施工業者も建築主の意向は尊重せざるを得ないので、個別案件においては建築主へのアピールも有効であると考えられる。

誰が輸入建材の台湾代理店になり得るか?

多くの日本の建材メーカーが台湾への売り込みを考える場合、台湾企業に輸入代理店になってもらうことが多いと思う。

先ほど述べた通り、輸入と卸売に専念し、インテリアデザイナー・内装業者・施工業者・小売業者などと等距離で上手く付き合い、商圏を広げる卸売業者が輸入代理店としては理想である。しかし筆者の見るところ、輸入と卸売に専念できている業者は多くない。

また総合的に色々な建材を扱うようになると、その中でも売りやすいものを売る傾向が強い。自社の製品をしっかり売り込んでくれるかがポイントになる。規模が大きな業者だから良いというものでもなく、代理店選定は建材に限らず悩ましい部分である。

インテリアデザイナーや内装業者が、上流に遡って自分独自の製品を持つべく、輸入代理店になることも多く見受けられる。これらの業者が御社製品の輸入代理店を兼業した場合、その業者が手掛ける案件で積極的に使ってもらえるため、短期間で実績が上がりやすい。

しかしこの場合、インテリアデザイナーや内装業者の顔が前面に出過ぎ、その業者専用の製品となってしまうと、競合するインテリアデザイナー・内装業者が同じ製品を選定する可能性は下がると考えるのは自然である。長期的な商圏拡大で見ると不利になる場合もあり、この辺は悩ましいところである。

建材メーカーも既存の販売ルートを活かし、製品ラインナップを増やすために海外製品の輸入代理店を行うことがある。自社製品と輸入製品で衝突せず、上手くすみ分けられれば、純粋な輸入代理店の立場に近くなる。実際、輸入代理店の中には当初はメーカーからスタートしたものの、コストや職人の高齢化の関係から、輸入代理のビジネスに変更をした事例もある。

例えば台湾における独占取扱などの重大な事項については慎重に検討し、まずは代理店候補がどう御社の商品を扱うのか、どう売り込んでいくのかをよく確認するのが良いだろう。

出展費用を抑えるには「標準ブース」

「標準ブース」
「標準ブース」

しっかりと市場調査をした上で、いよいよ出展に挑戦する場合の費用だが、2023年の「Taipei Building Show」では3×3メートルの1小間(こま)で、上記のような「標準ブース」で51,450台湾元、為替相場は変動するが、仮に1台湾元=4.5日本円で計算すると、23万日本円を少し超えるくらいである。

「標準ブース」とは展示会(見本市)主催者が指定する内装業者がブース間の仕切りや看板、絨毯、受付台、椅子、LEDスポットライト、電源などをあらかじめ設置したブース。

もちろん「スペースのみ」申し込み、自分で内装業者にブースの設営をお願いすることも可能だが、「標準ブース」と「スペースのみ」の差額がTaipei Building Show(2023年)を例に取ると2,100元、仮に1台湾元=4.5日本円で計算すると、9,450日本円程度なので、「標準ブース」の方がコストは押さえやすいと考えられる。

横浜市の中小企業はまた横浜市やIDEC横浜の助成制度を上手く活用できると、さらに出展費用を抑えられるだろう。

参考文献

※閲覧日はいずれも2024年02月14日

  • 經濟部產業發展署全球資訊網--產業服務電子報 (https://www.ida.gov.tw/ctlr?PRO=epaper.rwdEpaperView&id=2479)
  • 六、領有建築師證書人數及開業登記人數統計 - 內政部 (https://ws.moi.gov.tw/Download.ashx?u=LzAwMS9VcGxvYWQvNDAwL3JlbGZpbGUvMC8xODk2Ny9hNTlmMmRkNy1hNjUzLTQ5ZWUtYmM0OS1hYjI2MmI2ZWE1ZWYucGRm&n=NC02LnBkZg%3D%3D&icon=.pdf)
  • 一位近70歲室內設計師最大心願 竟是為室內設計師爭取國考奔走 | 2023台灣國際室內設計‧材料大展 | 商情 | 經濟日報 (https://money.udn.com/money/story/123551/7236426)
  • 令和3年度木材産業国際競争力・製品供給力強化緊急対策のうち高付加価値木材輸出促進緊急対策事業(輸出相手国の規格・規制調査)報告書(台湾):輸入に必要な手続き・品質規格調査まとめ(https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/yusyutu/attach/pdf/mokuzai_yusyutu_seido-4.pdf)
  • 中華民國內政部建築研究所-緑建材標章 (https://www.abri.gov.tw/cp.aspx?n=805)
  • 台北國際建築建材暨產品展 (https://www.taipeibex.com.tw/zh-tw/index.html)
  • 看見台灣:1%木料自給率的背後 - PanSci 泛科學 (https://pansci.asia/archives/55416)

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筆者について

IDEC横浜・海外サポートデスク(台湾)
Pangoo Company Limited 代表 吉野 貴宣
https://www.pangoo.jp/

注意事項

本レポートの内容は筆者個人の見解であり、IDEC横浜を代表するものではありません。また可能な限り注意を払って調査・考察しておりますが、万一誤りや不十分な点がございましたらご容赦ください。


公開日時
2024年3月4日(月)