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- オンラインセミナー講義録:海外から見つけてもらえる外国語ウェブ (2023年12月08日開催、「はじめて・久しぶりに海外進出を考える横浜市内・中小企業向け台湾セミナー」第3回)
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オンラインセミナー講義録:海外から見つけてもらえる外国語ウェブ (2023年12月08日開催、「はじめて・久しぶりに海外進出を考える横浜市内・中小企業向け台湾セミナー」第3回)
海外進出を考える中小企業にとって、外国語ウェブサイトは
ウェブの基本は日本向けと同じ
そもそも外国語ウェブといっても、ウェブであり日本国内向けのウェブサイトと基本は同じです。日本向けも含めて自社のウェブサイトを以下の観点からチェックしてみてください。
- デザイン:わかりやすく、見やすく(近年はスマホ対応が重要)
- コンテンツ:想定ユーザーが興味を持つコンテンツを掲載
- SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン対策):想定ユーザーの検索キーワードや検索エンジンの仕組を踏まえた上で、上位表示されるように正しい方法でウェブを作る
- 広告・PR:ウェブを見てもらえるように広告・PRする
- 継続:一回作って終わりではない。追加・更新・修正・問い合わせ対応・アクセス記録の確認など継続した運用が必須
デザインに関しては最近はウェブの閲覧の多くがスマートフォンからになっているのでスマートフォン対応が重要です。
次にコンテンツ(内容)に関してはアクセスしてほしい「想定ユーザー」が興味を持ちそうなコンテンツが大事になります。
あとSEO(Search Engine Optimization、検索エンジン対策)という言葉が出てきました。間違ってもアクセス数を増やすためのグレーな手段ではなく、検索エンジンの仕組みを踏まえた上で、検索エンジン運営側が推奨するものです。以下はGoogleが公開している情報を元にしたものです。
- 自社のウェブサイトが検索エンジンに表示されているか?
- 狙っているユーザーに質の高いコンテンツを提供しているか?
- 所有するローカル ビジネスが Google に表示されているか?
- ウェブサイトのコンテンツにどのデバイス(スマホ・PC・タブレットPC)からでも速く簡単にアクセスできるか?
- 所有するウェブサイトは暗号化通信(https)に対応しているか?
最初に挙げた「ウェブの基本」と共通することが多いですが、基本に沿って良いウェブを作れば自然に検索エンジンでも上位に掲載されるようになるということです。
徐々にページを増やす方が着手しやすい
あと「継続」も重要です。特にコンテンツに関しては自社でかなり用意しなくてはいけないので、日々の業務の中でたくさんのページを一気に制作するのは大変です。それよりは大きな方向性を決めて、徐々にページを追加していく方が、途中で方向修正もできますし、負担が少ないと思います。
海外の検索エンジンでは表示されない「.jp」
基本は一緒ではありますが、海外向けと日本向けでは違う部分も当然存在します。特にURLについては注意が必要です。
- 1つのサイトに日本語と外国語を混ぜない
- 「~.jp」のサイトは日本国内向けと判定される。
-
言語・地域ごとに違うURLにする。例えば台湾向けの場合:
.tw/~
.com/tw/~ -
サイト内に言語の「メタタグ」を埋め込む
lang="ja-JP" (日本・日本語)
lang="en" (英語)、lang="en-US" (米・英語)
lang="zh-TW" (台湾・繁体字中国語)
まず同じキーワード「mcdonald」で検索しても日本と海外の検索エンジンでは出てくるサイトが異なります。例えば日本のGoogleだと日本のマクドナルド(www.mcdonalds.co.jp) が表示されますが、台湾だと台湾のマクドナルド(https://www.mcdonalds.com/tw/zh-tw.html)が表示されるのです。
当たり前と言えば当たり前なのですが、Googleはサイトの内容がどの国や地域向けの物か認識して検索結果の表示を変更しています。よって国・地域別もしくは言語別にサイトは分ける必要があります。また1つのサイトに日本語と外国語を混ぜるべきではありません。そうしないと海外の検索エンジンで上位に表示されません。
またGoogleはどの国や地域向けかを知る手掛かりとして国・地域別のドメイン(ccTLD)を使っています。皆さんのウェブサイトのドメインで「~.jp」と「.jpドメイン」を使っている場合があるかと思いますが、これは日本国内向けなので、日本国外向けには不適切です。
例えば台湾向けの場合は台湾向けドメインの「.twドメイン」を使うのが一つの方法ですが、これは展開を考えている全ての国・地域に対して、最初から異なるドメインを取る必要があります。
もう一つの方法としては「.com」など国・地域に縛られないドメイン、「gTLD(generic top-level domain)」を取得する方法があります。ちなみに「com」は「commercial」の頭文字を表し、企業や商用サービスのWebサイトで主に使うためのもので、 国や地域には関係がありません。
この場合、ドメインだけ見てもどの国や地域向けか分かりませんので、Googleに対して、以下のようにどのURLがどの国・地域向けか明示する必要があります。
- ~.com/japan/~ (日本向け・日本語)
- ~.com/english/~ (地域指定無し・英語)
- ~.com/unitedstates/~ (米国向け・英語)
- ~.com/taiwan/~ (台湾向け・繁体字中国語)
指定はサイトに以下のような「メタタグ」を埋め込みます。
- lang="ja-JP" (日本向け・日本語)
- lang="en" (地域指定無し・英語)
- lang="en-US" (米国向け・英語)
- lang="zh-TW" (台湾向け・中国語)
台湾と中国(大陸)の中国語の違い
例えば日本語と日本向けはほぼ同じですが、例えば中国語の場合は「zh-TW(台湾向け)」、「zh-CN(中国向け)」、「zh-HK(香港向け)」等があります。繁体字(旧字体)と簡体字だけでなく、語彙や言い回しにも差があります。
英語の場合は、本当はアメリカ英語とイギリス英語で違うはずですが、まずは「地域指定無しの英語」サイトとして公開し、国・地域別のニーズが顕在化した時点で別途該当する地域向けの英語サイトを作ることもできます。
海外の想定ユーザーを考えよう
また想定ユーザーも、海外向けと日本向けでは違う部分も当然存在します。
- デザイン:国・地域で好みが違う
- コンテンツ:国・地域・業界が違うと当たり前のことが当たり前でないかもしれない。翻訳を考えれば、出来る限り分かりやすい原稿を作るのが重要。
- SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン対策):国・地域で使っている検索エンジンが違うかも。検索キーワードも色々異なるかも。
- 広告・PR:国・地域で使っている検索エンジン・SNS・ウェブメディアに違いがあるかも。
- 継続:どの市場向けでも一緒。問い合わせ対応をどうするかは考える必要がある。
デザインに関しては、中小企業でいきなり各国の差異をカバーするのは大変だと思いますので、筆者個人の見解ですが、分かりやすいデザインであれば、日本企業ですし、日本のデザインでも良いと思います。
コンテンツに関しては、国・地域だけでなく、業界が違うと当たり前のことが当たり前でないかもしれません。翻訳も考えると、できるだけ異業界の人でも分かりやすい原稿を作るのが良いと思います。
なお海外向けコンテンツを機械翻訳で作成するのは、かなり正確な翻訳が出る場合・全く不正確な翻訳が出る場合の両方があり得ますし、正しいかどうかチェックもできません。特にマーケティングを考えると直訳では海外の消費者がピンと来ない可能性が高いので、お勧めできません。
機械翻訳で品質の低い外国語原稿を修正してほしいという依頼も来る可能性があるのですが、結局正しいかどうか確認するためには原文(日本語)をチェックせざるを得ず、普通の翻訳と手間が変わらないどころか、不自然な機械翻訳の表現の影響を受けてしまうリスクもあります。こちらもお勧めできません。
SEOの観点からも機械翻訳されたキーワードが、その国・地域の想定ユーザーが検索でよく使うものなのか、判定できないため、やはり専門家の手でその辺を意識して翻訳したほうが良いと思います。
検索エンジンやSNSに関しては、台湾の場合はGoogle、Yahoo、Facebook、Instagramはよく使われていますが、Twitterはあまり使われていないです。例えば中国のように国家によるアクセス制限の関係で、日本とネット環境が全く違う国もあります。
問い合わせ対応については簡単なものについては機械翻訳を使うのは推奨できませんが、やり取りしているうちに翻訳がおかしかったことに気付ける可能性があるため、暫定的には「有り」かもしれません。
しかし困ったときにすぐに助けを求められるよう、例えば定期的に追加コンテンツの翻訳をお願いするなど、専門家と関係を構築すべきだと思います。毎回違う専門家を使うと背景を理解してもらうだけで時間がかかるため、ある程度固定した専門家に翻訳等の仕事をお願いしたほうが良いと思います。
追記:複数の国・地域相手に越境ECを始める場合の注意
セミナー当日、質問をいただいたので、追記をするとそれぞれの国・地域に対し、個別にマーケティングなどの対応をするということであれば良いかと思います。逆に複数の国・地域の差を無視する場合は難しいかもしれません。
中小企業の場合は人や資金も含めた色々なリソースが足りないことが多いかと思いますので、まずは1つの国・地域で試してみて、その成果を元に拡大する方が良さそうな感じがします。ただし商品などの特性や選定する国・地域によっても異なるかと思いますので、あくまでも参考までにお聞きいただけますと幸いです。
潜在顧客の段階によって情報発信の内容は違う
廉価な商品などでは衝動買いというのもあるとは思いますが、検討開始から実際の購入までは上表のような段階を踏むのが普通です。それによりコンテンツは調整すべきです。
上表の4や5のようにもう買う商品がかなり固まっていて、後は比較検討するだけの状態であれば、製品仕様(サービス内容)・価格・メリットなどを見せれば済むかもしれません。でもウェブサイトにそれだけ書いてもなかなかアクセス数が増えないのは、実際には1〜3の段階の人が多いからでもあります。
例えば、筆者の会社の場合、1や2の段階だと台湾ビジネスに興味がある程度であり、すぐに何かを始める段階ではないので、台湾ビジネスに関するニュースや読み物など「ゆるめ」の発信をしています。この段階だとSNSによる情報発信も良いかと思います。
3の段階だと台湾ビジネスへの意欲があるが、何から始めたら良いか明確になっていない状態です。そのために「台湾展示会を視察」、「現地法人を台湾に設立」、「台湾の展示会に出展」など、台湾ビジネスのために具体的にやるべきことを提案するわけです。
潜在顧客がどのようなキーワードを使って検索するか検証
コンテンツを作成するときは潜在顧客がどのようなキーワードを使って検索するか想像すると良いと思います。これは日本国内向けも同様です。
「Google広告」の中に「キーワード プランナー」というページがありますが、広告出稿をしなくても無料である程度使うことができ、Googleでどんなキーワードでどのくらいの回数検索されているか「月間平均検索ボリューム」の欄で確認することができます。
筆者の会社の関係の場合、検索回数がある程度多いのは、「Food Taipei」などの台湾展示会や「台湾 会社 設立」、「台湾 法人 設立」などです。こういったキーワードのトレンドを先に知っておくと潜在ユーザーが使いそうな検索キーワードの仮説が立てやすいです。
「キーワード プランナー」を使う際に注意していただきたいのは「月間平均検索ボリューム」の中に何も表示されていない場合です。これは月間の検索回数がかなり少ないためなのですが、逆に言えばそれだけターゲットが狭くなっているので、こういったキーワードで検索したユーザーは購入につながる可能性が高いと言えます。
例えば普通のネットユーザーは台湾の展示会に出展しないので「台湾 展示会 出展」というキーワードで検索される回数が少ないのは当然です。しかし逆に言えば、このキーワードで検索した場合はほぼ間違いなく台湾の展示会への出展を検討している人ですから、商談につながる可能性が高いとも言えます。
Googleの検索結果に①自社サイトのどのページへのリンクが、②何回表示されたか、③何回クリックされて自社サイトへの来訪につながったかは、「Google サーチコンソール」で確認することができます。これは自社サイトにGoogle指定のコードを埋め込む必要がありますが、費用は無料です。
筆者の会社のウェブサイトの場合「台湾 日本大使館 ない」というキーワードで日本の在台湾日本代表である「日本台湾交流協会」に関するページが良く検索されます。このページだと直接商談には繋がらない可能性が高いと思われますが、台湾に興味があるのも間違いないと思われます。
そこで該当ページの下にはうちの会社が何をやっているか業務内容の概要を示した上で、TwitterやFacebookでフォローしてもらうとか、台湾の専門家として会社の名前を覚えてもらうことを目標としています。先ほどの購入意欲の段階で行くと1とか2のレベルです。
購入意欲が高そうなキーワードとしては「台湾 会社設立 費用」で台湾会社設立に関するページが検索されています。検索回数もアクセス数も少ないですが、購入意欲の段階で行くと4とか5のレベルです。このページでは台湾における会社設立の手順や費用などの情報を掲載しています。
また5の段階で「最後の一押し」として、ページの一番下にすぐに時間を予約可能な「無料相談」予約ボタンを設置しています。
こういったキーワードに関するまた5の段階で「最後の一押し」として、ページの一番下にすぐに時間を予約可能な「無料相談」予約ボタンを設置しています。
キーワードについては仮説と検証の繰り返し
潜在顧客がどのようなキーワードを使って検索するかは、①顧客の立場に立って想像し、②キーワードを含むコンテンツを作成し、③実際の検索結果を見る、このサイクルを回すことが大事です。継続が大事な理由はここにあります。
また海外向けの場合はこれを外国語で行うため、ご自身で外国語ができない場合は、専門家を入れて分析を行う必要があります。
SEOや広告も含め、ウェブを使ったプロモーションはすぐに効果が出るものではありません。しかし正しくコツコツ取り組むとそれなりに効果が出てきます。何よりもウェブサイトを構築しなかったり、構築しても更新しなければ、土俵に上がれず、ネットにおける検索キーワードのトレンドすらつかめません。
検索結果上位
「Google サーチコンソール」で確認できるデータの中に「掲載順位」というものがあります。「掲載順位」は日々変動するので、平均点で計算するので、小数点が入ることがあるのですが、これも非常に重要です。
掲載順位1位というのは検索結果1ページ目の一番上に表示されることを意味します。当然このような良い場所に掲載された場合はクリックされる回数も増えます。SEOの目的の一つとして掲載順位の上昇があります。
しかしSEOは小手先のテクニックでは決してありません。Googleも検索エンジンとしての評判がありますので、検索されるキーワードを元に、ネットユーザーが見たいであろうと思われるウェブページを検索結果に出すようにしています。逆に言えばユーザーが見たい良質なページを作れば自然に掲載順位は上がります。この点を忘れないようにしてください。
テキスト(文字)が基本
デジタルやネットの世界ではテキスト(文字)が作成・編集・流通に一番有利です。もちろん画像・動画・VRなどに見た目にこだわることは潜在顧客の見やすさの点では重要ですが、それ以前にウェブサイトに来てもらわないとお話になりません。検索エンジンは基本的にウェブページのテキストを分析しているので、まずはテキストに力を入れるのが基本となります。
もちろん全部文字のウェブページはさすがに可読性が低くなるので、適宜、写真や図などの画像を入れるのは有用です。でもテキストがメイン、画像は補足であることに気を付けてください。
内容も日本の業界を必ずしも知らない外国人でも分かるように、難しい専門用語を排し、「当たり前」 のことを含めて、分かりやすく書く必要があります。分かりやすく書かれた資料は色々な言語への翻訳のベースにすることもできますし、誤訳の可能性を下げることもできます。
日本語であっても、説明する相手が業界に新規参入する人だったり、利用者だったり、マスコミだったりすると、余りに専門的な説明では伝わらないかもしれません。また自業界では「当たり前」なことが、海外や他業界では「すごい」ことになるかもしれません。ウェブサイトに掲載する資料は、まずは分かりやすさを重視しましょう。
「言語化」した自社・自社製品の強みを使いまわす
また分かりやすい資料は、日本語のままでも、新入社員への研修、今までとは違う異業界の顧客への説明などにも「使いまわし」が利きます。また外国語に翻訳された原稿は海外展示会のパンフレットなどに「使いまわし」が利きます。
海外向けウェブサイト制作を良い機会として、自社やその製品の強みを文章や図表を組み合わせて分かりやすく説明する努力をする、営業支援の資料を作成し、蓄積していくようにすることを意識すると良いと思います。
IDEC横浜海外サポートデスク
IDEC横浜・海外サポートデスク
IDEC横浜では台湾現地にサポートデスクを設けて、横浜市内中小企業の台湾ビジネスに関するサポートを行っております。是非IDEC横浜にお問い合わせください。
講師について
IDEC横浜・海外サポートデスク(台湾)
Pangoo Company Limited 代表 吉野 貴宣
https://www.pangoo.jp/注意事項
本レポートの内容は筆者個人の見解であり、IDEC横浜を代表するものではありません。また可能な限り注意を払って調査・考察しておりますが、万一誤りや不十分な点がございましたらご容赦ください。
- 公開日時
- 2024年2月20日(火)