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オンラインセミナー講義録:台湾展示会活用 (2023年10月12日開催、「はじめて・久しぶりに海外進出を考える横浜市内・中小企業向け台湾セミナー」第2回)
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オンラインセミナー講義録:台湾展示会活用 (2023年10月12日開催、「はじめて・久しぶりに海外進出を考える横浜市内・中小企業向け台湾セミナー」第2回)

台湾企業への「売り込み」に台湾展示会(見本市)への出展はよく見られる方法ですが、なぜ出展するのか?その理由も含めて、台湾展示会(見本市)出展について考えていきましょう。

台湾展示会(見本市)出展のメリット


自社ブースに興味を示した来場者と効率良く商談

来場者が多くの企業のブースが一か所に集まる展示会(見本市)に行くのは、多くの場合、商品や業界について能動的に情報収集を行う目的が多いです。企業に一方的に売り込みに来られるのと違って来場者にもメリットがあるわけです。

そういった展示会(見本市)が設定している一定のテーマに興味を持つ人が数多く来訪する会場にブースを出し、声をかけることで、数多くの、かつ自社製品に興味を持ってくれる可能性が高い人にアピールできます。

また来場者が情報収集する中で御社のブースに興味を持って声をかけてくれた場合、企業からの一方的な売り込みに比べて、より対等な立場を保ちながら商談に持ち込める可能性が高くなります。

よく「数打てば当たる」という言い方がありますが、展示会では、声をかける相手をある程度ふるいにかけ、質を保ちつつ、数を打つことができるのでより高い効果を期待できるわけです。

様々な台湾展示会(見本市)


台湾で行われる展示会(見本市)のごく一部

台湾展示会(見本市)出展を検討する場合、まず「どの台湾展示会(見本市)に出展すればいいのか?」という疑問が上がります。

ご自身で探して見たい場合、JETRO(ジェトロ、日本貿易振興機構)が運営している「世界の見本市・展示会情報(J-messe、https://www.jetro.go.jp/j-messe/)」というサイトに台湾を含めた海外の展示会・見本市の情報が掲載されています。

また「台湾貿易センター(TAITRA、タイトラ)」東京事務所のウェブサイト(https://tokyo.taiwantrade.com/)にも台湾の展示会・見本市の情報の一部が掲載されています。

さらに英語もしくは中国語になりますが、「台湾貿易センター」台北本部から発信されている「Taiwan International Tradeshows (https://www.taiwantradeshows.com.tw/)」にも台湾の展示会・見本市情報が掲載されています。「台湾貿易センター」は台湾・台北にある主な大型展示場を複数運営しているため、それらで行われるイベントはほぼ把握しています。

上記のサイトで気になる展示会を見つけたら、各展示会の公式サイトをチェックしてください。公式サイトでチェックすべきポイントとしては、以下のものがあります。

  1. 展示会の内容
    1. 出品される商品・サービス
    2. 対象地域:台湾内向けか?台湾外向けか?
    3. 入場者の属性:一般消費者向けか、バイヤーもしくは代理店候補など向けか?
  2. 過去の開催規模:以下をチェック
    1. 出展者数:出展者の数
    2. 出展小間数:出展者が使った小間(こま)の総数。展示会(見本市)において出展者に貸し出すために仕切られた空間を小間(こま)と呼び、台湾の場合、多くは1小間=3×3メートルになります。広いブースを出したい場合は複数小間を申し込みます。
    3. 入場者数:展示会によっては国別、業界別、業種別、職業別などに分けた入場者数を開示している場合もあります。
  3. 開催期間:毎年開催している展示会は毎年ほぼ同じ時期に開催されるのが普通です。
  4. 開催場所:日本から出展する場合、まずは台湾・台北で開催される展示会を選択するのが普通だと思います。
  5. 出展費用:後述します。
  6. 日本からの支援
    1. ジャパンパビリオン:日本台湾交流協会・JETRO・業界団体で取りまとめ
    2. 地方自治体ブース:県・市単位で取りまとめ
    3. 単独出展:1社で出展するが、県や市の助成金制度が使える場合も

展示会の公式サイトは中国語や英語が多く(ときどき日本語も)、また過去の開催規模など細かい情報は調査が必要な場合もあるので、横浜の中小企業の皆様は、どの展示会に出展するかを検討する段階で、早めにIDEC横浜の専門家に相談されることをお勧めします。

早い段階で相談を入れていただいた方が、例えば費用等に関しても、IDEC横浜だけでなく、神奈川県や横浜市の助成制度で適用可能なものがあるかどうかなども調べてくれます。是非上手に活用してみてください。

出展費用を抑えるには「標準ブース」


「標準ブース」の例

台湾出展会の出展費用は展示会によって変わりますが、例えば2023年の「台北國際建築建材暨產品展 (Taipei Building Show)」に3×3メートルの1小間(こま)で出展する場合は、上記のような「標準ブース」で51,450台湾元でした。為替相場は変動しますが、仮に1台湾元=4.5日本円で計算すると、23万日本円を少し超えるくらいです。

「標準ブース」とは展示会(見本市)主催者が指定する内装業者がブース間の仕切りや看板、絨毯、受付台、椅子、LEDスポットライト、電源などをあらかじめ設置したブースです。

もちろん「スペースのみ」申し込み、自分で内装業者にブースの設営をお願いすることもできるのですが、「標準ブース」と「スペースのみ」の差額が先述のTaipei Building Show(2023年)を例に取ると2,100元、仮に1台湾元=4.5日本円で計算すると、9,450日本円程度なので、「標準ブース」の方がコストは押さえやすいと思います。

「標準ブース」も追加費用でカスタマイズ可能

「標準ブース」の最初の構成では一見すると何のブースか来場者になかなか分かってもらえません。そこで予算を追加してカスタマイズを行います。カスタマイズはPOP広告など自分たちで行えるものもありますが、主催者指定の内装業者に頼んだ方が良いこともあります。例えば上図のブースではこんな追加依頼を想定しています。

  1. 看板のカスタマイズ:通常は社名とブース番号のみ印刷した統一デザインの大判シールを貼り付けるのですが、追加費用で会社ロゴや商品名を入れるなどのカスタマイズが可能です(ただし看板に会社名以外の印刷を禁止するなどの展示会ルールがある場合も)。
  2. バックパネルのカスタマイズ:パネルは白色メラミン化粧板とアルミ枠の構成で無機質なので、全面にブースにあった画像を印刷したシールを貼り質感を向上させます。節約のためブース前を通る人から一番良く見えるのが一番奥のバックパネルのみ全面にシールを貼ります。バックパネル全面に貼るのが大きなポイントで、筆者の経験上、ポスターなどのように一部のみ隠すより大幅に質感が向上します。
  3. 展示台の追加:標準で1台含まれる受付台(兼展示台)を追加して2台セットでブース前面に配置します。見せたい商品やPOP広告などは全てこの展示台に置きます。筆者の経験上、よほど大きなブースでない限り、ブース内に来場者はなかなか入ってこないので、ブース前を通る人に良く見えるよう、通路に沿って展示台を置く方が良いと思います。
  4. イスとテーブルの追加:標準ブースでは、折り畳みいす1つのみだったので、折り畳みいす3つと小さな(50×50cm)テーブル1つを追加しています。基本的に商談・打ち合わせ用では無く、ブース要員の休憩・食事・荷物置き用などに使うことをお勧めしています。

ブース内の商談をお勧めしない理由

多くの来場者が来訪する展示会(見本市)となると、同時に複数人数がブースに立ち寄る事態は当たり前に起こります。いちいちブース内で商談をしていたら、その間に逃す来場者も多くなります。

また真剣に展示会(見本市)を見に来る来場者は、ビジネスの可能性を追求する、もしくは後学のために色々なブースを見たいと考えるはずです。一方で明らかに休憩のために商談を装って実は座りたいだけという人もいます(会場は広いので回るとかなり疲れます)。

よって真剣な来場者・出展者双方にとって、ブース内で商談するより、会期終了後、もしくは急ぎの場合は夜にでも商談をする方がゆっくり話もできますし、望ましいことがほとんどです。

決戦はブース前!ブース前の流れを整理しよう

海外の展示会ではつい興奮してしまいがちですが、来場者に自社ブース前でどう足を止めてもらい、どういう流れで話を進めるかよく考える必要があります。業界などによって変わってくる場合もありますが、例えばこんな流れになると思います。

  1. ブースの外でチラシをたくさんの人に渡す。
  2. チラシを渡しながら声をかける。
  3. 興味を持って足を止めた人には説明員が簡単に説明。
  4. さらに興味を持った人からはなぜ興味を持ったかアンケートに回答してもらう・名刺をもらう
  5. 通訳はアンケートのチェック
  6. 中国語ができない場合は後方支援

ブースの外でチラシをたくさんの人に渡す

来場者から見ると、訪問中にできるだけ多くのブースを見たいと思います。よって御社ブースの前を通っても、一見しただけでは、なかなか何を展示しているのか理解できず、素通りされてしまうことが多いです。まずは説明員がブース前を通る人にチラシを渡します。

チラシはもちろん台湾の中国語で準備しておく必要があります。英語ではやはり伝わりづらいです。また台湾の中国語と中国の中国語では繁体字(旧字体)と簡体字だけでなく、語彙や言い回しにも差があります。

チラシは、例えば5万人来る展示会で10人に1人配るつもりであれば5,000枚準備する必要があります。印刷会社にもよりますが、4,000枚を超える場合は、5,000枚も8,000枚もそんなに変わりません。機会損失を回避するためにもかなり多めに印刷し、余らせるくらいがちょうど良いと思います。このようにたくさん配布するチラシのことを「バラマキチラシ」と呼ぶことがあります。

少なめに印刷し、万一足りない場合にコピーなどで補う場合、1枚辺りのコピー費用は白黒であってもカラー印刷の2倍以上かかります。また臨時でアレンジする手間を考えると避けるべきだと思います。

その代わりA4・1枚・両面印刷で収まるように工夫をしましょう。冊子や折りにすると印刷代が大きく跳ね上がりますし、社員にホチキス止めやチラシ折りをさせるのも時間がかかるので、人件費を考えると割に合いません。

チラシを渡しながら声をかける

チラシを渡すときは、声掛けをします。自社ブースで何を展示しているのかを一言で分かってもらう必要があります。「一言」とは時間にすると2〜3秒程度です。分かりやすいチラシ+声掛けで、初めて自社ブースの概要が理解してもらえるくらいに思っていてちょうど良いと思います。

「一言」がなかなか思いつかない場合、それは自社ブースで展示する商品やテーマがしっかり絞り込まれていないことを意味します。商品やテーマを絞り込む必要があるわけです。

興味を持って足を止めた人に説明員が簡単に説明

声掛けをした結果、来場者がブースの展示に興味を持って、足を止めてくれる場合はチラシの内容+α程度は説明員の方から説明をし、来場者がどういう理由で興味を持ったかをヒアリングします。

台湾の展示会(見本市)でブースを出展する場合、小さなブースであっても、説明員は最低3名置くことをお勧めしています。説明員を会期中ずっと立たせていては疲労が激しいものになります。2名がブース前に立ち、1名は休憩という事で交代で休憩してもらうことで、会期を通して元気よく接客できるわけです。

説明員には来場者との中国語のやり取りの上手さ・一種の営業能力が要求されます。また「冷やかし客」と本当の「見込み客」を見極め、適切に対応するのも重要です。説明員は通訳とは分け、説明員がしっかり説明を行えるよう、チラシ+αの少し詳しい情報が含まれる資料を中国語でしっかり準備しておく必要があります。

資料の準備不足で、泥縄で通訳に日本語の説明を渡し、説明員を兼任させるブースも多いのですが、要求される能力が異なりますし、1人の人材であれこれ要求すると人件費が上がるため、望ましくありません。

名刺をもらう・アンケートに回答してもらう。

本当の「見込み客」の場合は、名刺をもらうか、アンケートに連絡先を残してもらいます。アンケートの他の項目は、説明員が記入しても良いですし、来場者に記入いただいても構いません。

アンケートは来場者自身で書くこともありますので、設問は中国語・日本語併記で準備し、また記入時に負担にならないよう、選択肢を用意したり、設問の数を絞り込む必要があります。また設問に当てはまらない事項が必ず出て来るので、備考欄は大きめにする方が良いです。

本当の「見込み客」の場合は、名刺をもらうか、アンケートに連絡先を残してもらいます。アンケートの他の項目は、説明員が記入すると良いと思います。もちろん来場者に記入いただいても構いません。殴り書きなどで連絡先などが読みづらい場合もありますので、必ず説明員がチェックする様にしてください。

この後、ブースの日本人&通訳の手が空いていれば、来場者を連れて行って、名刺交換やあいさつするのも絆を深める意味では有効だと思います。もし手が空いていない場合はそのまま「後日連絡します」ということでも良いと思います。

記入されたアンケート(+名刺)はすぐに通訳がチェックをします。説明員による殴り書きの場合は説明員本人しか読めない場合もありますので、当日の内にチェックを行った方が望ましいです。

中国語ができない場合は後方支援

日本からお越しの方は中国語ができない場合、後方支援に徹した方が良いと思います。忙しい中でついつい罪悪感でブースでチラシを配ってしまうのですが、それよりは事前準備にしっかり力を入れた方が皆助かります。

会期中は基本は通訳と一緒に行動し、チラシの内容+α程度で説明しきれない内容を、通訳を通して答えるとか、アンケート結果を確認するなど、日本側にしかできないことを行ってください。

特に通訳と一緒にアンケート結果を確認し、必要であればフォローアップを入れるのは早ければ早いほど良いです。フォローアップに割く時間や手間を考えず、展示会の成果をしっかり生かせない事例も多いと思いますので、是非フォローアップは意識してください。

「見込み客」とは?台湾展示会(見本市)出展の目的をより詳細に決める

「誰」に何を「売り込み」をかけるかを明確にすることも重要です。

例えば、建材の場合だと以下のようになるかと思います。日本から見て直接取引をするのは台湾輸入代理店になりますが、実際に建材を使う建主や建設会社、また建材を推奨する建築士やインテリアデザイナーも情報提供すべき相手です。さらにマスコミの場合は報道されると自社製品の知名度を上げるのに役立ちます。

  1. 代理店:台湾輸入代理店
  2. 利用者:家の建主や建設会社など
  3. 推奨者:建築士やインテリアデザイナー、マスコミなど

食材の場合は、以下のようになるかと思います。台湾の場合、外食率が日本と比べてかなり高いので、レストランやコンビニなど外食・中食産業に対しても知名度を上げるのも将来の代理店の支援としては重要です。

  1. 代理店:台湾輸入代理店
  2. 利用者:外食・中食産業や個人など
  3. 推奨者:台湾内の流通業、専門家、マスコミなど

来場者としては代理店候補は少なく、やはり利用者や推奨者候補の方が多いです。しかし色々な人に紹介することでニーズが明確になれば、商売になるので、代理店も自然と見つかりやすくなります。

自社・自社製品の強みの「言語化」

多くの日本の中小企業が台湾展示会(見本市)出展がゴールになってしまい、準備不足が目立ちます。特に準備不足な部分が海外向けの営業支援資料です。こういった資料の作成・改善の良い機会として台湾展示会(見本市)出展を上手く使ってもらえればと思います。

例えば写真が主体で文字が少ない日本語パンフレットを渡されても、説明員が上手に商品説明が出来るわけがありません。例えば説明員が日本語が上手だとしても専門用語は下調べしたいところですし、そもそも文字が少ない場合、パンフレットの写真をそのまま見せるしかありません。

また説明する相手が業界に新規参入する人だったり、利用者だったり、マスコミだったりすると、余りに専門的な説明では伝わらないかもしれません。また日本の自業界では「当たり前」なことが、海外や他業界では「すごい」ことになるかもしれません。

まずは日本の業界を必ずしも知らない外国人でも分かるように、難しい専門用語を排し、「当たり前」 のことを含めて、分かりやすく書く必要があります。分かりやすく書かれた資料は色々な言語への翻訳のベースにすることもできますし、誤訳の可能性を下げることもできます。

「言語化」した自社・自社製品の強みを使いまわす

また分かりやすい資料は、日本語のままでも、新入社員への研修、今までとは違う異業界の顧客への説明などにも「使いまわし」が利き、海外向けウェブサイトに掲載する資料にもなります。

逆もまたしかりで、海外向けのウェブサイトに掲載する資料も、日本の業界を必ずしも知らない外国人を前提に書くものですので、これも台湾展示会などに「使いまわし」が可能です。

つまり海外展示会や海外向けウェブサイトを良い機会として自社や自社製品を文章や図表を組み合わせて分かりやすく紹介した資料を作成し、蓄積していくようにすることを意識すると、自社やその製品の強みを言語化して分かりやすく伝える準備ができるのです。

IDEC横浜海外サポートデスク

IDEC横浜・海外サポートデスク

IDEC横浜では台湾現地にサポートデスクを設けて、横浜市内中小企業の台湾ビジネスに関するサポートを行っております。是非IDEC横浜にお問い合わせください。

講師について

IDEC横浜・海外サポートデスク(台湾)
Pangoo Company Limited 代表 吉野 貴宣
https://www.pangoo.jp/

注意事項

本レポートの内容は筆者個人の見解であり、IDEC横浜を代表するものではありません。また可能な限り注意を払って調査・考察しておりますが、万一誤りや不十分な点がございましたらご容赦ください。


公開日時
2024年2月20日(火)