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台湾コラム Food Taipei 2023レポート、コロナ明け初の開催
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Food Taipei 2023レポート、コロナ明け初の開催


Food Taipei Mega Shows

2023年6月に開催された台湾最大の食品関係の展示会・見本市、Food Taipei 2023 (台北国際食品展覧会)は「コロナ明け」の初めての開催ということもあり、かなり盛り上がり、日本からも多くの出展があった。

Food Taipeiの概要

Food Taipei (台北国際食品展覧会)は毎年6月後半に行われる台湾最大の食品関係の展示会・見本市である。また例年JETRO・日本台湾交流協会による「ジャパン・パビリオン(日本館)」が設置されて、日本からの出展も多い展示会でもある。

ここ数年は食品関連の展示会との共同開催(Mega Show)になっており、同じ会場・同じ期間に以下の展示会が行われている。

  • Food Taipei (台北国際食品展覧会)
    野菜、果物、生鮮農産品、酒類、コーヒー、茶、飲料、肉類・乳製品、スナック、有機食品、精進料理・食品、水産品、冷凍食品、キャンディー・クッキー、食品添加物、パン・ケーキ・パイなど、アイスクリーム・ソフトクリーム・アイスキャンデーなどの氷菓子。
  • Foodtech Taipei (台北国際食品加工機械展)
    食品加工やオープン設備、食品包装関連設備、食品製造工場プラント、飲用水・廃棄物・消毒処理設備、飲料・酒類生産加工設備、加工技術・添加剤、食品調理・洗浄設備、食品容器・加工設備、農産品・水産品・畜産品処理機械・設備、冷凍貯蔵設備、物流・輸送設備、食品・コーヒー・ドリンクスタンドの設備や関連製品
  • Bio/Pharmatech Taiwan (台湾国際生技製薬設備展)
    バイオ / 製薬に関するもの:加工機械・包裝関連設備、分析や計測機器、研究室設備、自動化ロボット、工場プラント、加工技術、廃棄物・消毒処理設備、バイオ / 製薬技術、製薬原料、農業テクノロジー(アグリテック)およびその設備
  • Taipei Pack (台北国際包装工業展)
    包装機械、包装材料、紙容器、包装工場設備、自動充填、シーラー・真空パック、はかり、印刷機器、テープ、フィルム・パレット、運送・倉庫・物流、食品・薬包装機械、包裝機械、製袋機、原料管理設備、真空パック機、ベルトコンベア、シュリンク包装機
  • Taiwan International Hotel, Restaurant & Catering Show (Taiwan HORECA、台湾国際飯店暨餐飲設備展)
    ホテル・飲食業設備、オーブン設備、食器・器・皿、清掃・洗浄・クリーニング設備・原料、寝具・照明装飾、客室備品、家電AV設備、事務管理・セキュリティーシステム、物流宅配サービス、食材・調味料など

開催規模・来場者数

Food Taipei Mega Shows フロアマップ
Food Taipei Mega Shows フロアマップ

主催者側発表では、30か国より2,488小間、1,053社の出展があった。台北南港展覽館のホール1とホール2のほとんどがブースで埋まった。2019年には及ばないものの、それなりの規模にまで戻ったと言える。

Food Taipei Mega Shows来訪者
Food Taipei Mega Shows来訪者

日本からの出展

ジャパン・パビリオンにて
ジャパン・パビリオンにて

新型コロナ(COVID-19)による渡航規制の関係で、2022年までは出展申込の少なかったのか、出展取消が相次いだのか、ジャパン・パビリオン内に多数の空きができていたが、今年はジャパン・パビリオン内には空きブースはなく、多くの出展者が集まった。

日本九州パビリオンにて
日本九州パビリオンにて

全日本菓子輸出促進協議会
全日本菓子輸出促進協議会

またジャパン・パビリオン以外でも、日本の地方自治体や業界団体などによる単独出展も多かった。なおジャパン・パビリオン出展と単独出展の際は下の表を確認していただきたい。費用の観点から中小企業の場合はジャパン・パビリオンに出展することが多いが、出展場所の違いから、単独出展を選択する出展者もいる。

Food Taipeiへの出展方法
Food Taipeiへの出展方法

日本勢の存在感が復活したのはよろこばしいことだが、今後はまた出展の質が問われるようになると思われる。今後Food Taipeiへの出展を検討される中小企業の方のために出展に当たっての留意点を書いていきたい。

事前調査の重要性

日本の、特に中小企業はどういう理由でFood Taipeiに出展するのであろうか?筆者がヒアリングする範囲では「親日だから」もしくは「売れると思った」などの曖昧、もしくは直感的な理由が多いように思う。

同じ10人に聞いても意味が違う
同じ10人に聞いても意味が違う

また「台湾の人に美味しいと言われた」「台湾の人の評価が高かった」という場合もあるのだが、よくよく聞くとヒアリング相手の選び方や設問に問題があり、客観的な見方を提供するどころか、最初から結論ありきで自分の意見を後押しする材料を探しているだけになっている場合も多い。

筆者の過去の経験で挙げると、朝食の自炊を想定した商品を出展してしまった例がある。この出展者は台湾の外食率、特に朝の外食率が高いことに対して、あまり認識が無かった。専門家でなくとも、台湾に住んでいれば、台湾では多くの人は朝食を外で食べることは知っているはずである。

もう一つ体験談を挙げると、日本のとある食品が「美味しい」と言われ、いきなり台湾に進出をしたものの大苦戦となった。確かに日本製は美味しかったのだが、価格が台湾産の3倍だったのである。本当は「3倍の値段を払っても食べたい美味しさ」なのかが重要だったのだが、見落とされていた。

展示会出展など、台湾への進出を考える際は、事前に市場調査が必須である。また気になることがあれば、セカンドオピニオンを得るのも良い。いずれにせよこういった時に専門家と話をし、第三者からの意見を得て欲しい。

例えば、乳製品に注目

カリフォルニア・ミルク協会
カリフォルニア・ミルク協会

ここ数年カリフォルニア・ミルク協会は連続してFood Taipeiに出展し、アピールしている。実は台湾での原乳の生産量は決して多くなく、生産コストも高く、飲用のチルド牛乳は日本と比べても高い。

牛乳1リッター平均的小売価格(By Numbeo)


牛乳1リッター平均的小売価格(By Numbeo)

よって流通日数の関係で新鮮さが求められる牛乳やヨーグルトに関しては台湾産が多いが、チーズやクリームなどは逆に輸入品がほとんどであり、また全体的な重要も増えると考えられ、日本産乳製品の開拓の余地があると考えられる。

現在でも日本産、特に北海道産の乳製品のイメージは良いと思われるが、日本産や日本ブランドの牛乳や乳製品を飲んだり、食べたりしたことがない台湾の消費者も多いようである。

台湾では乳製品に関してはニュージーランド産が目立つが、これは2013年12月1日に発効した台湾・ニュージーランド間経済協定によるものだと考えられる。ニュージーランドからの牛乳への免税枠は当初は5,500トンから始まり、徐々に増加、免税枠超過後の関税は1キログラム当たり14台湾元となっている。さらに12年後の2025年からは完全に免税となる予定である(日本から牛乳を輸入する場合、15.7台湾元/kg、免税枠無し)。

洋菓子にも注目

スイーツが高い


スイーツが高い

乳製品が高いということは、バターやクリームを使う洋菓子も台湾では高い。日本と比べると2倍以上の価格になっている商品もある。日本の洋菓子も台湾では定評があるので、そういった分野にも勝機があると思われる。

牛肉輸出に見る、「組織の力」の重要性

台湾では牛肉に関しては国産が非常に少なく、9割を輸入に頼っている。日本産の和牛も味の面で評価が高く、大いに可能性があると言える。しかし出展者によっては長期的な観点が欠けているように見える。

今年はかなり多くの和牛関係のブースが見られた。しかしコロナ禍の時期には和牛関係のブースは少なかった。コロナ禍の時期は日本に行けなかったため、「偽出国(疑似出国)」として日本色に対する関心が高まっていた。こういった時に出展できなかったのは残念である。

またFood Taipeiの公式ウェブページから各ブース情報をチェックしても、ほとんど情報が無く、下手をすると出展者のウェブサイトに台湾の繁体字中国語版も英語版も準備されていないケースもあった。これは牛肉に限らないが、日本勢は展示会に出るだけで手一杯であり、事前の準備や事後のフォローも含めて、展示会をどう活用するかをしっかり考える余裕がないように見える。

米国食肉輸出連合会 (U.S. MEAT EXPORT FEDERATION)
米国食肉輸出連合会 (U.S. MEAT EXPORT FEDERATION)

同じく牛肉輸出に力を入れている米国では、米国食肉輸出連合会 (U.S. MEAT EXPORT FEDERATION)という非営利団体が出展をしている。米国産牛肉の安全性やおいしさは団体でアピールしたほうが合理的だろうと思われる。

またコロナ禍の間も含めて、長期間にわたりFood Taipeiに参加し、台湾向けのウェブやFacebookを運営し、台湾現地に連絡事務所を置いている。これも個々の農家ではなく、業界団体として取りまとめてやっているからこそ可能なのだと思われる。

そもそも米国は日本と比べると台湾からの距離は遠く、気楽に展示会に行けるわけではない。だからこそ団体として、適宜現地のパートナーや人材を上手く活用し、コロナ禍の間も含めて、長期的な取り組みや出展後のフォローを実現できていると思われる。

牛肉に限らず、米国パビリオンの出展者のかなりの部分を米国政府、州、業界団体などの非営利団体が占めている(残りは米国産食品を扱う台湾の代理店)。

台湾企業の方が日本ブランドをうまくアピールできる?

日本ブランドの使い方が上手い
日本ブランドの使い方が上手い

上記の写真は台湾企業のブースだが、「ラーメンを作るなら本場日本の良い材料を使おう」ということで、この会社が取り扱っている日本の小麦粉、調味料、材料などを売り込んでいる。この会社も2023年も含め連続して出展している。

台湾では「日本○○製粉の小麦粉」とか材料や部品のブランドも最終製品のアピールに使われることが多く、こういったところは台湾企業の方が日本ブランドの使い方が上手い場合が多いように思う。

近年「クールジャパン」という単語が良く使われるが、その定義は「外国人がクールととらえる日本の魅力」である。「日本人が考える本物の日本」を押し付ける場ではない。そこは勘違いしないようにすべきだと考える。

いかにターゲットを絞り、ブースを「とがらせる」か

先ほどの台湾企業では、日本の小麦粉、調味料など様々な商品を扱っているが、ターゲットを「ラーメンを作る人(店や食品製造会社など)」に絞ることで、ラーメンの原料を売り込むことが分かりやすいブースになっている。

日本勢でも、様々な商品を展示しているブースがあるが、それは「自社で複数の商品を取り扱っているから」もしくは「せっかくブースを出すから、あれもこれも並べたい」など、自社都合であれこれ並べ、来訪者が一見しても何を売り込みたいのか分からないブースになっていることが多い。

もう少し言うと、絞り込むべきなのは売り込む先であると考える。例えば同一県産で絞るのは、たしかにテーマは絞っているが、売り込むのはインバウンドの行き先としての県ではなく、あくまで食品である。そこは混同しない方が分かりやすいと思われる。

また味噌、醤油、出汁など、調味料を出品している場合は、どうしても来訪者の反応も薄いことが多いように思う。筆者が想像するにいくら業界関係者でも「味噌が欲しい」と思って会場をうろうろしている来訪者は少ないのではないだろうか?

例えば、輸入業者であれば「売れそうな商品はないか」、外食業者であれば「新しいメニューに取り入れられる新しい要素はないか?」などと考えながら見ているとすれば、調味料の使い道が見える展示にした方が来訪者のニーズに沿っていると言える。

試食は有効か?

先ほどの台湾企業では取り扱っている日本製品を使って作ったラーメンを有料で試食させていた。無料だと美味しく感じても、値段がでると手が出しづらくなるということは大いに起こりうる。有料で試食させることは価格設定が適切かどうかを知る上でも有効であると考える。

無料で集まった人全員に試食させるのは、ブースに来訪者を集め、盛り上げるために大いに役立つと思うが、試食だけが目的の人も集まってしまい、本当にビジネスチャンスを求めて商材を探している人への対応がおろそかになってしまう恐れがある。大盤振る舞いも考え物である。

まとめ:仮説とその検証の重要性

以上、色々書いたが、現実問題として、通常業務の合間を縫って展示会の準備をするのは大変であるし、あれこれ考えていくといつまでも海外展開を始められない。色々不足している部分があったとしても、何もしないよりまずは海外展示会に出展した段階で、「大きな一歩」を踏み出したと言える。

だからこそ、それを無駄にしないために、走りながらでも、展示会の反響を受けて、やり方を修正していく必要がある。

  • 展示会は手段:展示会は企業の海外進出の一部にすぎない。
  • 情報収集:自分の意見を後押しするためではなく、あくまで仮説を立てるために現地の情報を集める。
  • 仮説を立てる:誰を売り込みのターゲットにすべきか、どう売り込むべきか、最初から100%正解を探し当てるのは難しい。まずは具体的な仮説を立て、それを検証することで正解に近づくアプローチを取るのが良い。
  • 仮説を検証・修正:展示会での反響などを元に仮説を検証し、必要に応じて、修正をしていく。
  • 複数回出展:見せ方が上手い出展者も最初から上手かったわけではなく、なんども出展している中で徐々に改善していることが多い。最初から複数回出展するつもりで長期的な計画を立てるべきである。

参考文献

※閲覧日はいずれも2023年8月24日

IDEC横浜海外サポートデスク

IDEC横浜・海外サポートデスク

IDEC横浜・海外サポートデスク

筆者について

IDEC横浜・海外サポートデスク(台湾)
Pangoo Company Limited 代表 吉野 貴宣
https://www.pangoo.jp/

注意事項

本レポートの内容は筆者個人の見解であり、IDEC横浜を代表するものではありません。また可能な限り注意を払って調査・考察しておりますが、万一誤りや不十分な点がございましたらご容赦ください。

  • 台灣人吃日本料理有8成愛「這一味」 王品推新品牌擴張日料版圖!力拼單月營收200萬 - 今周刊 (https://www.businesstoday.com.tw/article/category/80392/post/202009040025/)
  • 臺灣進口牛肉多 風險管理這樣做 (食品安全資訊網-食安報馬仔、https://www.ey.gov.tw/ofs/15881103EFD02C4/d3935ba5-3d8c-4c7d-8367-7aa5d98c6501)
  • 【紐乳侵入】2025年紐西蘭進口液態乳全面零關稅!台灣牧場成長受限、價格戰迫在眉睫 @ 食力foodNEXT‧食事求實的知識頻道 (https://www.foodnext.net/issue/paper/5739679558)
  • 台灣外食比例近7成!當代飲食文化轉變 現在誰來煮飯? @ 食力foodNEXT‧食事求實的知識頻道 (https://www.foodnext.net/life/culture/paper/5234763202)
  • Price Rankings by Country of Milk (regular), (1 liter) (Markets) (https://www.numbeo.com/cost-of-living/country_price_rankings?itemId=8)
  • 台北國際食品展-展覽簡介 (https://www.foodtaipei.com.tw/zh-tw/menu/D36D21463B36FBB5D0636733C6861689/info.html)
  • 台北國際食品展-2023年台北國際食品展展後報告 (https://cloudcdn.taiwantradeshows.com.tw/2023/food/download/post-show-report-ch.pdf)
  • 台北國際食品加工機械展&臺灣國際生技製藥設備展-展覽簡介 (https://www.foodtech.com.tw/zh-tw/menu/C6C2D60698882092D0636733C6861689/info.html)
  • 台北國際包裝工業展覽會 -展覽簡介 (https://www.pack.org.tw/web/news/news_in.jsp?np_no=NP1667370605202&lang=tw)
  • 台灣國際飯店暨餐飲設備用品展-展覽簡介 (https://www.taiwanhoreca.com.tw/zh-tw/menu/5BC94F1FB4308C38D0636733C6861689/info.html)
  • 一般社団法人日本乳業協会:牛乳乳製品の市場調査及び日本産乳製品に関する調査~台湾編~最終報告書 (https://www.nyukyou.jp/asset/pdf/action/201903_taiwan_final.pdf)
  • 臺紐經濟合作協定 ANZTEC (https://fta.taiwantrade.com/pages/ftapage_newzealand.html)
  • 臺紐簽署經濟合作協定 農委會與產業界積極準備因應並尋求新契機(農業部全球資訊網) (https://www.moa.gov.tw/theme_data.php?theme=news&sub_theme=agri&id=4697&RWD_mode=N)
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公開日時
2023年8月30日(水)