

IT・IoT・技術
製造業
専門家のマッチングにより市内大手企業と協働。独自商品を開発
図書館向けに本の除菌装置も開発
コンビニエンスストアのおでん鍋、スーパーにある焼きいも機、テイクアウトコーナーに置いてあるホットショーケース…。おそらく、誰もが目にしたことがあるのではないでしょうか。これらはすべて「電気厨房機器」と呼ばれるものです。エイシン電機(保土ケ谷区)は、この分野のパイオニア的存在です。同社の製品は、食品工業のみならず、大手スーパーやコンビニ、フランチャイズなど全国で広く使われています。規格品から完全オーダーメイド品まで含めると、数え切れないほどの製品ラインアップがあります。
創業は1976(昭和50)年。計良英二氏(現会長)が、電気調理器の販売目的で始めました。当時の厨房機器はガスが中心でした。それに対し、海外では電気式が普及していたため、日本でも海外製を輸入して使おうとする動きがありました。しかし、そもそも外国で設計された厨房機器は“日本仕様”にはなっていません。そこで計良氏は、国内では初めてとされる電気コンロを開発。以来、「適温を追求する」というコンセプトで、さまざまな厨房機器を世に送り出しています。
わずか45秒で除菌可能
そんな同社が、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に開発した製品があります。図書館向け「本の除菌装置」です。現在、市内図書館では感染症対策の一環として、返却された本でも72時間を経過しなければ、再び貸し出すことはありません。加えて、一部図書館では、利用者のさらなる安心感につなげるため、本を持ち出すときに除菌できるセルフ除菌装置の導入が計画されました。
そこで装置開発に手を挙げたのが同社です。もともと、医療機器製造販売業者として感染症対策などになじみがあり、箸や調理器具、哺乳瓶、歯ブラシなどの殺菌システムを手掛けていたのが理由です。そして3カ月後には完成にこぎつけています。
完成した装置は、一般的な電子レンジより、やや大きいサイズです。実際の新型コロナウイルスを使って不活化検証されているUVランプ「UV-CCL(紫外線冷陰極管)」が4本内蔵されており、B5サイズなら6冊まで一度に投入、わずか45秒で除菌可能です。UVランプには同じ市内に拠点があるスタンレー電気製を採用しました。「図書館のみならず、保育園でぬいぐるみの除菌など、あらゆる用途が期待できます」と久世直樹社長。さらなる飛躍を見据えています。【2021年度支援事例】
成功のポイント
- 顧客ニーズに基づく特注品開発が得意な企業体質であり、自社設備で設計~製造工程を短期間で行えた。
- 医療機器製造販売業者として、新型コロナウイルス対策に貢献するため、得意な殺菌・消毒の領域で新規デバイス(殺菌灯など)の研究を行っていた。
- IDEC横浜のマッチング支援により、横浜に拠点を置く大手企業の協力を得て、独自性のある製品が開発できた。
