海外展開
卸売業,小売業
台湾サポートデスクを活用し、老舗酒問屋が自社ブランドクラフトビール「TDM 1874 Brewery」の海外販路を開拓
挑戦の熱意から生まれたクラフトビール
明治7年創業の老舗酒問屋、株式会社坂口屋は地元横浜で「町の酒屋さん」として地域との結びつきを大切にしている。同社は店舗の一つの改装を機に「新しい商品開発に挑戦しよう」と考え、クラフトビール製造・販売を検討した。
取締役の石田氏がアメリカの醸造所で働いていた経験を持ち、1日の仕事の終わりにクラフトビールを飲むことが生活の一部として溶け込んでいた事を思い出したのだ。地元横浜の果物や米など、多様な材料を使うことができ、2~3週間と短い期間で醸造できるクラフトビールの展開を進めた。
石田氏の大切にしている、「楽しむ」「挑戦することをやめない」という強い意志で取り組む姿勢も実現の原動力になった。
世界中の人たちに飲んでもらえるクラフトビールにしたい
同社は地元横浜でクラフトビール「TDM 1874 Brewery」の製造・販売を開始したが、クラフトビール市場を見据えると、日本国内の競合が多数いることなどから、海外市場にも目を向ける必要があると考えた。ただこれまで海外展開の経験が無かったため、IDEC横浜の国際ビジネス支援の専門家に相談した。
専門家との相談助言をふまえ、石田氏は、クラフトビールは短期間で製造できる反面、賞味期限も短いこと、輸送コストや地理的な近さなどから、最初の市場に台湾を選定し、2022年に、台湾サポートデスクの支援を活用し現地視察を行った。
3日間の視察において、サポートデスクが手配した現地の飲食店をいくつも訪問し、現地の人々の生活様式や食文化などを知る機会を得て、「台湾と日本の酒文化の違いを体感した。台湾の文化を理解している現地企業とのつながりを築く重要性を感じた。日本国内で1年間調査するよりも、この3日間の現地視察が充実していた」と述べている。
台湾のクラフトビール市場はまだ小規模だが、現地のSNSが貴重な情報源であることにも気付いた。若い世代がクラフトビールをおしゃれなカルチャーとして受け入れており、クラフトビールの愛好家などもいることがわかり、アプローチの方法も個別に検討できる機会となった。
台湾視察後は、店舗での陳列の方法を工夫してみたり、デザイナーと組んでラベルの趣向を色彩豊かにしたりと、クラフトビールを広めるための活動に余念がない。
石田氏は「今回の台湾での取組みから輸出・販売を実現して、台湾を皮切りにアジア諸国や世界中でクラフトビールを飲んでもらえるようにしていきたい、そこには、ただ販売して終わりではなく、製造者として継続してクラフトビールを楽しんでもらえるような市場を開拓していきたい」との強い意欲を持っている。
(2023.10月掲載)
成功のポイント
- 現地で生活する人々の生活様式に実際に触れることによる貴重な情報の収集
- 地元事業者との繋がり及び海外企業との協力の重要性
- 仕事を「楽しく」取組むことを大切にし、事業を成功させるために強い意志で挑戦し続ける姿勢