新型コロナウイルス検査の行方

横浜医工連携推進コーディネーター
森尾 康二

2020年3月27日(金)

昨年末に始まった新型コロナウイルス感染症は2月を跨いで3月に入っても世界的な規模で拡大を続けている。我が国では中国武漢からの帰国者とクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客乗員の中での感染拡大とその後のクラスター(小規模な患者の集団)を中心とした国内感染の行方に注目が集まっている。この中で新型コロナウイルスの検査について厚生労働省と国民との意識の違いが浮き彫りになってきていた。ここに至ってようやく、検査のあり方についてコンセンサスが取れる様になってきている。

今回の新型コロナウイルス感染をインフルエンザウイルス感染に準えて捉えてきたきらいがある。ところがウイルスの性格が十分に理解されているインフルエンザウイルスと比べて新型コロナウイルスの性格は依然として未知のままで、専門家としてもどの様に処してゆけば良いものか対応に苦慮している。

感染の不安を抱いている多くの国民から見ればインフルエンザの如く簡便に白黒が付く簡易検査キットがあればと考えるはずだ。しかし新型コロナウイルスの検査において最も信頼が置かれていて一般的に使われているPCR検査は結果が出るまでに6時間もかかってしまう。PCR検査の代替となる検査方法が提案されているが、未だ医学的な信頼を得ていない。いち早く臨床の場で使用されて成果を出すことが期待されている。

<PCR法>
ウイルスの遺伝子を酵素の働きと温度を上げ下げする事で増幅させ、増えた遺伝子を染色し目で確認して陽性・陰性を判断する。ロシュ、キアゲン等は既に装置・試薬を商品として持っている。今後の開発に名乗りを挙げているのは杏林製薬、東ソー、島津、日水製薬等。
<イムノクロマトグラフィー法>
血液中の抗原と標識抗体が反応してできる複合体が膜上を移動して別の抗体と結合して発色する。デンカ生研、富士レビオ、関東化学、クラボウが開発中。
<LAMP法>
栄研化学が独自に開発した遺伝子増幅法。キヤノンメディカルシステムズも開発中。
<SmartAmp(スマートアンプ)法>
神奈川県衛生研究所と理化学研究所が開発中。
<発光物質+磁気微粒子法>
産業技術総合研究所とコニカミノルタで開発中。
<肺CT画像のAI診断>
ノーリツ鋼機グループのドクターネット社が北京のインファービジョンと提携して日本に導入。

※3月14日時点の情報によるものです。

こうした中、これからの検査方法は大きく二つに分けて進んでゆくものと思われる。

検査を含む医療体制に対して一定の信頼が醸成されるころ、感染の流れも終息に向かうものと期待したい。

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