画像診断技術の新しい流れ

横浜医工連携推進アドバイザー
森尾 康二

2020年1月31日(金)

医療分野における技術進歩が人類に大きな福音をもたらしました。とりわけ画像診断の分野では永らくX線画像によって様々な科目で、より正しい診断により、その後のより適切な治療が実現してきました。一般撮影(X線)の時代が永く続いてきましたが、1970年代初頭にコンピュータ断層撮影(CT)、続いて磁気共鳴画像(MRI)が出現して、その後の研究開発も相まって今日の画像診断の主流となってきています。この間に超音波検査(US)、放射性同位元素(RI:ラジオアイソトープ)を利用したシンチグラフィや陽電子放出断層撮影(PET)なども加わって、それぞれの特性を生かした画像診断技術が今日の高度な医療を支えています。こうした画像化のモダリティー(※)は今後も技術開発によって更に高度化、多様化していくと思われますが、最近、臨床現場に登場しようとしている新しいモダリティーをご紹介します。

(※…医療においては治療手段や方法、医療検査機器の単位を表す)

(1)光干渉断層撮影(OCT)
CTの一種。光(主に近赤外線)を生体に照射して対象臓器の断層像を高分解能・高速で、且つ非接触で取得できます。ただし測定できる深さは数ミリメートル内にとどまっています。臨床的には、ほとんどが眼科領域に使用されていて、網膜疾患の診断・評価に欠かせない装置となっています。又カテーテル先端部にこのOCT装置を取り付けて血管内の断層像を撮影するという使い方もあります。この他皮膚科、歯科等の用途も研究されています。横浜医療機器ビジネス研究会メンバーのシンクランド(株)は独自のOCT技術を持っています。
(2) 光超音波断層撮影(Photoacoustic tomography)
レーザー光を生体に照射して、このレーザー光によって細胞が振動して発する超音波を検出し、これを画像化する技術。非侵襲かつ無被爆という特徴があります。特に血管と血液の状態を高解像度で3D画像化できることから、数多くの病態の観察・評価に利用できるものと考えられています。(株)LUXONUS(開発拠点:川崎市)がこの技術の事業化を目指しています。心臓部である受発信器は同じく研究会メンバーのジャパンプローブ(株)が担当しています。
(3) マイクロ波マンモグラフィー
携帯電話の1千分の一程度の微弱な電波(マイクロ波)を乳房内に照射し、この際の波動から癌組織の位置や形を計算して3D画像を作ります。マイクロ波が乳房の正常組織であるコラーゲンや脂肪は通過する一方、水分を多く含む癌組織にぶつかると跳ね返る特性を生かした技術です。この分野では神戸大学の木村建次郎教授が設立したスタートアップ企業(株)Integral Geometry Scienceが一歩先んじています。

こうした新しいモダリティーの登場によって、現在一般的に利用されているCT, MRI等の画像に加え ①高解像度で微細組織の可視化、②3D化、③より高度な機能分析 などが目指せると思っています。

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