医工連携と歯工連携

横浜医工連携推進コーディネーター
木下 綾子

2019年8月26日(月)

残暑の厳しい日が続いています。皆様いかがお過ごしでしょうか。

医工連携といいつつも、最近では医師からのニーズだけではなく、看護師、歯科医師、臨床工学技士等からのニーズを起点にすることも増えています。特に「医科」と「歯科」は同様の特性を持つ業界と考えがちですが、実際は異なる文化が存在します。

厚生労働省の平成28年度「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によると、医師数は約32万人、歯科医師数は10万人強となっており約1/3です。歯科は競開業医の割合が非常に高く、歯科診療所はコンビニよりも多い件数。激しい競争が繰り広げられており、高額医療機器の導入が難しい診療所も多いのが実情でしょう。

厚生労働省の平成28年度「国民医療費」によると、医科の診療医療費は増加傾向ありますが、歯科の診療医療費は長年横ばいです。歯科の診療医療費はおよそ医科の1/14。新技術の保険収載が進まないため、医科に比べると新技術を用いた機器の導入意欲が低いと考えられます。

診療医療費の推移

出展)厚生労働省 平成28年度「国民医療費」

ただでさえ競争が激しい歯科診療所。新しい医療機器を導入できる診療所ばかりではありません。そのため、歯科の医療機器メーカーは開発しても導入されない可能性が高いため、全くの新製品を開発するよりも、現行品の継続販売・改良になる傾向があります。

次に示したのは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公表している新医療機器の承認品目一覧を集計したものです。平成18~30年で新医療機器として承認されたのは507件ありますが、そのうち歯科はたったの1件しかありません! 歯科業界が新医療機器の開発が進まない現状をよく表しています。

新医療機器の承認件数

出展)(独)医薬品医療機器総合機構 承認品目一覧(新医療機器)をもとに筆者集計

これから歯工連携に取り組む企業もいらっしゃるかと思います。医科のように次々に新医療機器が開発される業界ではありませんし、それを診療所に導入してもらうにもハードルが高いのです。

そのような環境ではありますが、多くの歯が残っている高齢者が増えたことによる高齢者の歯周病の増加や、インプラントを入れた高齢者のトラブルなど、新たなトピックスもありますので、業界動向を注視しながら取り組んでいただければと思います。

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