福島での医工連携の試み:機能付きインフラの価値

横浜医工連携プロジェクト アドバイザー
森尾 康二

2016年9月26日(月)

医工連携活動は政府・地方自治体の後押しもあってこのところ各地のクラスターで様々な動きが出てきています。この中で東日本大震災からの復興をベースにした福島県での活動がこのところ目立っています。

先日「ふくしまからはじまる医療機器の未来」というタイトルの下、日経ホール(大手町)にて「ふくしま医療機器開発支援センター」のオープニングプレイベントが開催されました。福島県は震災に見舞われる前から県が主導して医工連携活動を活発に行ってきましたが震災を契機に医療機器産業の振興になお一層力を入れる様になってきました。その旗振り役が内堀雅雄知事で、今回のイベントの中でも基調講演として「ふくしまの復興と医療機器産業」として原稿なしで20分に亘って熱のこもったメッセージを送っておられました。後半では菊地眞先生(ふくしま医療機器産業推進機構理事長)の名司会の下で官民5人のパネラーが参加した活発なディスカッションが行われました。

この福島での仕組みについて若干ご説明をします。今回開設される「ふくしま医療機器開発支援センター」は①安全性評価(とりわけ国際基準のGLP試験)②コンサルティング・情報発信③人材育成・訓練(とりわけ豚を使った手術トレーニング)④マッチングの4つの機能を持っています。この運営に当たるのが「ふくしま医療機器産業推進機構」という組合せです。ハードとソフトを持ったこの組織はいわば[機能付きインフラ]と呼んでも良いのではと思います。この[機能付きインフラ]は福島県に医療機器産業を呼び込んで根付かせるための重要なツールに他ならないのですが、これで医療機器産業の育成が完結するのでしょうか?

ニーズからはじまって商品に結実するまでのプロセスは皆様既にご存知の通りです。このプロセスの中で[機能付きインフラ]が果たせる役割が大きい事はその通りです。しかしこのプロセスの主役はあくまでもアイデア・技術・商品でなければなりません。

臨床の場での価値に結実できるアイデア・技術を掘り起こして育ててゆく事こそが我々の求める医工連携でなければなりません。

このための良質なネタ(アイデア)をここ横浜から皆さんと一緒に探し求めてゆきたいと思っています。

次回は、これまでの横浜医工連携活動から生まれてきた良質なアイデア・技術について紹介します。

以上

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