QMS省令について

横浜医工連携プロジェクト アドバイザー
山越 淳

2018年6月25日(月)

色々とある医療機器の規制の一つにQMS省令があります。この省令は正確には「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」といい、医療機器の製造工程はもちろん、設計開発など製造に至るまでの市販前のプロセスや、市販後の製品に関連するプロセスなど、市販後の医療機器の製造、販売等、幅広いプロセスをその対象にしています。

このQMS省令は、本年度改正が予定されています。今年の3月に開催された医機連主催の講習会では、5月頃にはパブリックコメント発出、6~7月頃に施行予定と言われていましたが、現時点でパブリックコメントは発出されていません。(恐らく7月頃にはパブリックコメントが出されるのではないかと推察されます。)なお、今回の改正は、同省令のベースとなっているISO13485の改正に伴うものであると言われています。ISO13485と同時期に改正されたISO9001では、章立てが大幅に変更される等、比較的大きな変更がありましたが、ISO13485:2016は、改正前の章立ては維持されており、(見た目には)ISO9001ほど大きな変更はないような印象を受けます。しかしながら、要求事項の追加や変更は一定程度されており、改正されるQMS省令も同様の変更が反映されると思われます。(正確な情報は、今後発出されるパブリックコメント等を参照ください。また、改正省令施行後は様々な通知が発出されますので、注意深く確認して頂ければと思います。)

医療機器産業に参入を予定されている会社の方とお話をすると、このQMS省令には当たり前のことしか書いてなく、結局何を実際にすれば良いのか分からない。というお話を時々伺います。実はQMS省令(ISO13485も同じですが)は、企業が確立すべき社内プロセス等の概念や方針が主に定められており、実施すべき具体的内容が規定されている項目は多くありません。このため、(なんだか禅問答にも思える)項目を頑張って読み進めても、「それは分かるけど結局何をすればいいの?」という前述の様な感想が出てくるのは当然かも知れません。
一方、QMSを整備して良かったと言われるお話も時々伺います。その方にお話を伺うと、その会社では(例え一部でも)理想的な体制が整ったことによって、従来の問題点や課題が解決する方向に動き出したというのです。QMS省令が”当たり前の”要求事項(そうとは思えない事項もあるかも知れませんが)だとすると、体制がある程度整ったことによって、その”当たり前”のことが例え一部でも社内プロセスとして動くことになってその様な効果が実感できる様になるのかも知れません。今後、医療機器産業に参入するにあたり、QMSに適合した社内体制を整える必要がある会社様は、単に規制をクリアするためだけではなく、会社の課題を解決するための手段として、あるいは会社がステップアップする機会と捉えて社内体制の構築に取り組むことができれば理想的なのかも良いかも知れません。

なお、前述のISO13485:2016ですが、要求事項を説明した実践ガイド(「ISO 13485:2016 医療機器における品質マネジメントシステム 実践ガイド-ISO/TC 210からの助言- ISO編著 日本医療機器産業連合会 ISO/TC 210 国内対策委員会 監訳)が日本規格協会から出版されています。このガイドは、QMSの適合性調査を行う監査員も参考にする文献だと思われますので、ISO13485を取得されている企業様や取得される予定のある企業様の他、QMSの適合性調査を受ける機会のある会社の方も今後の参考にされると良いかも知れません。

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