医療機器産業はプロダクトアウトか、マーケットインか?

横浜医工連携プロジェクト アドバイザー
木下 綾子

2018年5月25日(金)

気温も暖かくなり、すっかり初夏になりました。新年度から医療機器の分野に取り組もうとお考えの企業も多くいらっしゃるのではないかと存じます。そこで、中小製造業が参入するにあたって留意すべきポイントをお伝えしたいと思います。

プロダクトアウトとマーケットイン、製品開発ではよく聞くキーワードですね。プロダクトアウトは、企業がもつ技術やアイデアから研究・開発を行い、製品を市場に投入する方法です。中小製造業は特化した技術分野で事業を営んでいますので、プロダクトアウト型の事業展開が中心なのではないでしょうか。本当にイノベーティブな製品は、プロダクトアウトから生まれると言われています。例えば、アップルのiPhone、ソニーのWALKMAN等です。当初は市場がなかった製品で、製品が発売され市場を作ったと言えるでしょう。民生品の場合は、このようなイノベーションが数多く存在します。顧客自身が気づいていない潜在ニーズを掘り起こし、市場をつくることができるからです。

一方、マーケットインは、市場調査により顧客のニーズをもとに製品開発を行い、製品を市場に投入する方法です。高度経済成長期からバブル期は作れば売れる時代でしたが、バブル崩壊後は市場が飽和状態になり、顧客のニーズを重視するマーケットインの考え方が主流となってきています。

企業から顧客へ技術・アイデア(シーズ)を含めた製品開発の賞品を販売する図

企業のもつ技術・アイデアを起点とする
「プロダクトアウト」

顧客のニーズを市場調査し、それを起点とした技術開発を企業が行い販売する図

市場ニーズを起点とする
「マーケットイン」

それでは、医療機器の場合はどうでしょうか。そもそも患者がいなければ革新的な製品を出したところで売れるはずもありませんし、使用する医師に認められた製品でなければ売れないでしょう。また、医療機器の場合は人命にかかわるため、全く新しい製品は好まれないのも実情です。ですから、顧客のニーズに沿った製品開発(マーケットイン)が中心になります。

ここで言う顧客とは誰を指すでしょうか?医療機器業界の場合は、使用する医師であり、使用される患者です。医工連携に参加するにあたって、もちろん企業が持つ技術にさらに磨きをかけることも重要ですが、自社の技術がどの分野の医療機器に活かせそうか、ある程度のあたりをつけて探索し、自社の技術とニーズをマッチングさせなければいけません。

横浜市の医工連携事業では職員・コーディネーターが一丸となり、医療側のニーズ、企業側のシーズのマッチングを勧めています。また、情報提供・交換の場の提供も行っていますので、まずは市場調査やネットワーク形成としてご参加いただければと思います。

本文中に記載されている会社名、製品名等は、各社の登録商標または商標です。本文中ではTM、(R)マーク等は明記していません。
※iPhoneはApple inc.の登録商標です。iPhone商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。
※WALKMANはソニー株式会社の商標または登録商標です。

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