見守りについて

横浜医工連携プロジェクト アドバイザー
森尾 康二

2017年10月25日(水)

先月27日~29日にかけて国際福祉機器展(以下、「HCR」)が開催されました。東ホールの全てのスペースを使って、介護・福祉に係わる殆ど全ての製品が展示されており、大盛況でした。例年通りベッド、車いす、歩行器、福祉車両等の製品展示がありましたが、最近とみに増えてきているのが “見守り” の技術・商品です。これまではどちらかというと初歩的な技術を応用した見守りでしたが(例えば離床マット)、これに加えて新しいアイデアに基づいた技術が持ち込まれており、これからに期待が持てます。

(1) 「ベッドサイドでの見守り」

これまでの見守りはベッドサイドでの見守りに限定されてきていました。 この中で特筆すべき技術は、ベッド上の人の生体情報(主として心拍と呼吸数)と睡眠状態を無拘束に、且つリアルタイムに把握することが出来るマットセンサーです。こうした情報を日常生活レベルの向上に利用して価値を生み出す点でパラマウントベッド(株)の「眠りスキャン」と「離床キャッチ」は他社を大きくリードしています。

一方ベッドサイドで人の画像をリアルタイムで監視する装置も広く利用される様になってきています。人の画像を取得する訳ですのでプライバシーへの配慮は欠かせません。この意味でノーリツプレシジョン(株)とキング通信工業(株)が販売している装置は、その人の輪郭を表示するのでプライバシーには十分に配慮がされています。

(2) 「居室内での見守り」

(1)の様にベッドサイドでの見守りは技術的にはほぼ完成の域に入っており、あとは取得した情報を「どの様に加工・連携すれば有効に利用できるか」が鍵になっています。しかし一旦ベッドを離れてしまえば監視のレベルは一気に低くなってしまうのが現状です。居室内、或いは将来的には居室を出た後にも、対象者の安全を見守ってゆくための技術が不足しています。

安全を確保するために必要なデータはいくつかあると思われますが、「現在位置」の把握とどのような状態で居るのかを生体情報や姿勢で知る事が必要だと思います。後者について言えば、最近はリストバンドの中にセンサーを埋め込んでこれらを知る事が出来る様になってきています。位置情報をある精度で入手できるようになれば、居室内の見守りも一定のレベルで可能になりますが、ここでもやはり入手した情報をどの様に活用して価値を出せばよいのかという問題は残ります。

HCRでは、これら個別の技術を生かした製品が展示されていましたが、それぞれの製品をどの様に生かせば日常生活レベルの向上という価値を生み出せるのか、更に一つ一つの商品を統合して、価値のレベルを上げていく努力が我々に求められていると感じています。情報をその瞬間、瞬間で利用するだけでなく情報を積み上げたうえで(ライフログ)、AI分析に掛けてもう一段上のレベルを目指していきたいと思っています。

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