外科用ウエアラブルチェア「アルケリス」開発の近況

横浜医工連携プロジェクト アドバイザー
森尾 康二

2017年6月26日(月)

このコラムの中でいくつかのトピックスを紹介してきていますが、やはり身近で具体的な開発案件にご興味をお持ちの方が多いのではないかと思っています。既に横浜医療機器ビジネス研究会のメンバーであるシンクランド(株) のOCT光源の開発案件、アネスト岩田(株) の新しいコーティング技術の紹介をさせて頂きましたが、今回はマスコミ・TV等広くメディアに取り上げられています (株)ニットーの外科用ウエアラブルチェア「アルケリス」の近況をお届けします。

外科手術には顕微鏡下手術の様に座ったまま手術を行うケースもありますが、胸部外科・消化器外科・整形外科等多くの科目においては立位のままで手術を行う事が殆どです。手術の種類、難易度によって必要となる時間は様々ですが、難しい手術になると10時間を超える事は珍しくないと言われています。この場合、技量をもつ執刀医に完璧な手術を行ってもらうために、全工程に亘って集中を保って頂く事が不可欠です。立位のまま長時間に亘って集中を保つよう求められても自ずと肉体的な限界があります。

(株)ニットーはここに着目して、立位のままでも座った感覚を保持でき、肉体的疲労を大きく抑える事が出来る装置として「アルケリス」を開発しました。開発の初期の段階では、体重の保持方法に偏りがあったり、安定性を保つのが難しかったり、いくつかの問題点はありましたが、何人かの執刀医の方々からのご意見を取り入れ、又横浜市から「成長発展分野育成支援助成金」も得て、満足のゆく機能を備えたモデルが今春に完成しました。試着したある執刀医の「いいね!ぜひ使いたい。」とのコメントが印象的でした。(株)ニットーは昨年4月頃からマーケティング活動を始めていますが、近々量産体制を整えて本格的にマーケティングに入ってゆく予定にしています。

現在「働き方改革」のテーマで国を挙げて、より人間らしい働き方を見出して実行していこうとしています。医師と云えども、より人間らしい働き方を求めています。「アルケリス」の様に直接的な意思表示がない隠れたニーズを掘り起こして、これを見える形にして医師に提案をしてゆくというアプローチが医工連携活動の一つの型と云えそうです。

(株)ニットー

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