ベンチャーキャピタル、ベンチャーファンドの役割

横浜医工連携プロジェクト アドバイザー
森尾 康二

2017年5月25日(木)

医療技術開発のプロセスの中にあって、「光る技術」をベースとした開発プロジェクトを組み立てるに当り、商品として市場に出す意味があるのか、どれほどの「臨床的価値」が期待できるのかを見極めなければなりません。開発品が属する診療部門に長い経験を持つ専門家の「目」がここで一番求められています。歴史が浅い事に起因するのでしょうか、日本においてこうした専門家の数は限られていて、その結果として開発の成果が十分に出ていない時期が続いています。

ベンチャーキャピタル(VC)、ベンチャーファンド(VF)という言葉が最近増えてきている様に感じませんか?成長戦略の一環として新しい価値を創造するために、あらゆる産業分野でVC、VFが活躍するようになってきましたが、ヘルスケア分野とりわけ医療機器分野で目立っています。政府施策という事だけでなく民間の中からもVC、VFに対する期待は高まっています。ヘルスケア分野に特化したVC、VFはいくつかあります。

(1)メドベンチャーパートナーズ:産業革新機構(政府系ベンチャーファンド)とみずほ銀行が2013年に設立し60億円のファンドを運営している。昨年10月現在9社に投資している。シリコンバレーで投資経験のある大下創社長とスタンフォード大学の池野文昭取締役が主として運営している。

(2)日本医療機器開発機構:米国FDA医療機器審査官を勤めた医師の内田毅彦社長が2013年に設立した。医療機器メーカーでの開発経験があり、開発の全てのプロセスのコンサルタントが出来る。

(3)ビヨンドネクストベンチャーズ:元ジャフコで医療機器ベンチャーへの投資を手掛けていた伊藤毅社長が2014年に設立した。中小企業基盤整備機構、第一生命、三菱東京UFJ銀行などからの出資で50億円規模のファンドを運営している。

(4)リアルテックファンド:いくつかの産業分野に投資しているが、ヘルスケア分野に特に力を入れている。ミドリムシを事業化したベンチャー「ユーグレナ」のCFOの永田暁彦代表が運営している。2016年1月時点でのファンド規模は55億円。

こうしたVC、VFはベンチャー企業に資金を提供するという立場だけでなく、ベンチャー企業が目論む事業の実現可能性を評価し、その評価に見合った援助をするという立場も併せて持っています。アメリカにおいては資金を提供するVC、VFの他に、ベンチャー企業を育成していくインキュベーションという機能が独立して存在すると言われていますが、日本においてはVC、VFがこの役割を併せて備えているのが現状です。

我々、横浜医工連携活動においても技術の探索に加えてプロジェクト組成が出来るまでになってきましたが、VC、VFに関われるほどのしっかりとした事業性を備えた案件を育てていきたいと思っています。

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