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横浜ビジネスグランプリ2019 横浜ビジネスグランプリ2019
ファイナルステージレポート

横浜ビジネスグランプリ2019 受賞者

最優秀賞

横浜バイオテクノロジー株式会社 
取締役研究開発部長 小倉里江子氏
http://ybt.co.jp/

プレゼン内容

「次世代型植物活性化剤の探索・評価サービス」

横浜国立大学発のベンチャー企業として、次世代を担う農業資材である「次世代型植物活性化剤」の研究を行ってきた。現在、同活性化剤の「原石」を探し出すための探索・評価を、メインのサービスとして展開している。

「次世代型植物活性化剤」とは、人で言う「トクホ(特定保健用食品)」を含む保健機能食品に該当し、植物の免疫力を高めることで、病害虫や雑草などの生物的ストレスに加え乾燥や低温などの非生物的ストレスから植物を保護する農業資材。植物はつねにこれらのストレスにさらされており、80%もの収量損失が生じている。

従来、これらのストレスを軽減するために農薬が活用されてきたが、近年、薬剤に耐性を持つ病害虫が発生し、農薬が効かなくなるという問題が深刻化している。次世代型植物活性化剤は、病害虫が感染すると抗菌タンパク質を作ったり、細胞壁を厚くしてそれ以上の侵入を防ぐといった、植物が本来持っているストレス耐性を増強することで、植物をさまざまなストレスから保護する。また農薬と異なり、菌や虫を殺すことがないので薬害耐性病害虫の発生を抑えることが可能だ。

ところが、この次世代型植物活性化剤の探索・評価は技術的な難易度が高く、時間と手間を要するため、世界的にみても4剤しか存在しない。そこで、ホタルが光る仕組みを利用し短期間で高精度に探索・評価が可能な独自の技術を確立。これを次世代型植物活性化剤の開発を目指す各種メーカーに提供するサービスに着手した。

この技術を用い、「灰色かび病」から植物を保護する新しい物質を発見したが、世の中には、まだ評価ができていないだけで、こうした可能性のある物質が数多く眠っている。各種メーカーが持っている化合物、天然物、抽出物といったユニークな物質と、当社の探索・評価技術が融合することで、魅力のある次世代型植物活性化剤の開発に貢献していきたい。BtoBの受託試験サービス事業で、すでに9社・26件の実績がある。将来的には、この探索・評価技術を世界標準にするための挑戦も行っていく。

質疑応答

すでにBtoBでも実績があるとのことですが、顧客先は横浜市内の企業ですか?

基本的には全国区で、大手農薬・化学メーカーさんのほか、異業種では電機メーカーなどと取引をさせていただいています。

横浜の地域的な特性を活かすという部分で、何か考えていることはありますか?

みなとみらいに大きな企業の研究所が設立されるという話を聞いており、期待しているところです。横浜に数多くある企業等の研究所と連携することで、横浜から世界に飛び出していくような企業に成長していきたいと思います。

受賞コメント

最優秀賞を受賞した感想を聞かせて下さい。

一般の方にはなかなか理解していただけない、研究分野の込み入った話をどう伝えていくかに、かなり苦労しました。多くの方にアドバイスをいただきながら、専門用語をできるだけ使わず、オーディエンスの皆さんに私の手がけていることをわかっていただくことに一番の重点を置きました。今回、最優秀賞を受賞できたということは、それがある程度はできていたということだと思います。ここまでご支援いただいた先生方を含め、皆さんに感謝の気持ちで一杯です。

優秀賞(一般部門)

株式会社Aventino 代表取締役 金子 章子氏

プレゼン内容

「女性の髪のセルフケア支援プラットフォーム」

医師として10年以上、女性の髪の診療に取り組んできた。一般女性の3人に1人が髪のボリュームの維持や改善にお金や時間を使いたいと答えているが、大切な髪に変化が生じた時に、女性たちはなかなか行動できないでいるのが現状だ。

髪の変化が気になっても、半数以上の女性が誰にも相談できず、髪に影響を与える生活要因にも対処できずにいる。そこで、スマートフォンアプリを用いて髪のセルフケアを支援するサービスを提供する。

ユーザー女性は簡単な質問に答え、ライフログの入力、髪全体の自撮り写真の撮影を行うだけで、自分の髪の不調のタイプや髪の状態の変化、その時々で実践すべきケアなどを知ることができる。

特徴はAIを用いた独自の画像判定機能。髪の変化を自覚する女性の約6割が、最初の気になるサインとして髪のボリュームの変化を挙げているが、従来の髪の自動判定機能では地肌の広がりしか捉えることができなかった。本事業で開発するアプリでは髪のボリュームをAIで細かく判定することが可能で、早期対策や予防に役立つだけでなく、対策後の効果の判定もしやすくなる。関連学術論文と臨床データに基づいた独自のアルゴリズムでケアの提案を行う。

オンライン上で髪のセルフケアを提案するアプリはいくつかあるが、本事業のアプリでは、AIを用いた独自の判定機能、女性の複雑な髪の経時変化に対応した個別の提案機能、自分と似たプロファイルを持つ人の動向を参照できる機能という、他にはない機能が3つある。

BtoCとBoBでビジネスを展開していく。BtoCではアプリの利用を無料とし、アプリ内で提案した製品や医薬品の販売を収益源とする一方、BtoBではプラットフォームそのものの利用料と画像判定のライセンス料を収益源とする。

現在、アプリのプロトタイプを制作中で、完成後にモニターによるテストと資金調達を行う。本事業によるノウハウやデータは、日本人女性と髪質やライフスタイルが似ているアジア人の女性にも応用が可能。ITの持つボーダーレスな特性を活かし、国内需要の開拓とともにアジア市場への進出を目指す。

質疑応答

この事業を通じて、二次利用の価値があるデータがかなり蓄積されると思いますが、そこはどう考えていますか?

まさにおっしゃる通りで、私自身、医師としての立場でもこのデータの集積に非常に期待を寄せているところです。なぜかと言うと、男性の脱毛症は原因がはっきりしているので対処法もあるのですが、女性の場合、原因が多因子でメカニズムが複雑で、いまだに解明できていない状態だからです。女性の脱毛症の複雑なメカニズムを解明するには、ビッグデータの応用が有効ではないかと考えています。

受賞コメント

受賞の感想は?

そもそも、デリケートな女性の髪の話題についてオープンに話せる機会はなかなかありません。その意味で、こうしたオープンな場で、私たちも勇気を出してこのテーマについて語り、受け止めていただいたことが非常に嬉しいですね。

この事業にどんな価値があると考えていますか?

私自身、髪の問題に悩む女性が、患者さんとして病院に来られたときにしか関われなかったことに、もどかしさを感じていました。(ところが本事業を通じて)家で1人でどうしようか迷っている女性の状況を把握でき、迷い、悩みながらも行動を起こして病院に来て下さっている女性たちの気持ちにも向き合える機会をいただきました。また医療として治療法を確立していくうえでも、より多くの人の情報が必要とされています。その意味で、病院の中だけで女性の髪の問題について考えるのではなく、そこから一歩踏み出し、このタイミングでビジネスとして取り組むことに意義があると思っています。

優秀賞(学生部門)・オーディエンス賞

国士舘大学 加藤 早織氏

プレゼン内容

「施設の子どもたちへ、将来の選択肢の広がりを」

教育には、子どもたちの将来の選択肢を広げるという素晴らしい力がある。しかし、児童養護施設の子どもたちは、身体的および精神的に受けた影響ゆえに、学校に通わなくなったり、勉強に対して意欲が持てなくなっていることが少なくない。

実際、施設の子どもたちの大学等への進学率は一般家庭の4分の1に満たない。せっかく進学しても途中で退学してしまうケースが多く、その理由の約4割が学力不足によるものだ。こうした子どもたちに学習支援を行い、子どもたちの将来の選択肢を広げるために、「学力を財産に」をスローガンとする「Future Fortune Project」を立ち上げた。

「学力を財産に」をスローガンとする「Future Fortune Project」を立ち上げた。

世の中には、大学等を卒業するか、資格を取らなければ就けない仕事が数多くある一方、施設に入所した子どもたちには、勉強を教えてくれたり塾に通うお金を出してくれる親はいない。もちろん、国に申請すれば塾に通うことは可能だが、横浜市の場合、施設に入所している子どもたちの中で、塾に通っているのは6%程度しかいない。

自分がアルバイトをしている塾でも、施設の児童を担当したことがあるが、門限やルールが厳しく、学習時間の確保が課題になっていた。こうした児童養護施設の課題を解決するために考えたのが講師訪問型の学習支援塾「SKY CRAM SCHOOL」。

施設に、塾講師経験者と教職課程の履修者を講師として雇い、決められた曜日に授業を行い基礎学力固めを行う。児童の学習面の支援だけでなく、子どもたちの安全面の確保、外とのつながりを持つことに対する不安の解消、施設職員の労働負担の抑制が期待できることが「SKY CRAM SCHOOL」の大きな特徴だ。

兄弟や友達と一緒に楽しく学習できる「プチ集団コース」、一対一で自分のペースに合わせて学習できる「とことん学習コース」という2つの授業コースを設ける。施設が国に塾費用の申請を行うことで支給される措置金から月謝をいただき、講師へのアルバイト料を支払う。「SKY CRAM SCHOOL」で勉強を教わっていた児童たちが18歳になって施設を出たあと、先生として迎え入れたいと考えている。

どんな子どもたちにも、「将来のために学習したい」と思える環境を提供していきたい。

質疑応答

すでにプロジェクトが動いていて、成果も出ているということですが、どんな活動を行っているのですか?

「先生の卵」である塾講師経験者と教職課程履修者を集め、東京都内のある児童養護施設に学習支援を行っています。中学・高校生を対象にしていますが、当初は塾に通っている子どもたちは施設で2、3人しかいませんでした。ところが今では施設にいるほとんどの子どもたちが学習支援を受けており、勉強に対する意識が徐々に高まるなかで、施設内での通塾率が向上したと聞いています。

受賞コメント

学生部門優秀賞とオーディエンス賞のダブル受賞、おめでとうございます。

手応えはありました。私が大学で所属しているゼミが、このコンテストに継続して参加していたこともあり、この場で学生部門優秀賞を取ることが夢でした。最初は観客としてコンテストを見ながら、社会性に対してどんな切り口があるのかを調べたり、ファイナリストのプレゼンを研究したりと、さまざまなリサーチを行いました。自分の周りにどんな「負の悩み」があるのかを調べているなかで、私がアルバイトをしていた塾に通っていた児童養護施設の生徒が、成績がなかなか伸びずに塾を辞めてしまったことが、このビジネスプランを考えたきっかけです。

このビジネスプランをどう実現していきたいと思いますか?

この4月に横浜市内の学習塾に就職します。簡単に参入できるフィールドではないと思うので、いったん就職をしてスキルを高め、ビジネスもきちんと構築しながら土台を作り、起業に踏み出したいと思います。

女性起業家賞

プログス  桑子 和佳絵氏

プレゼン内容

「保育士のキャリアデザインサポートサービス」

保育士不足は、日本の成長戦略を語るうえで欠かせないキーワードの1つだ。東京では保育士の有効求人倍率が6倍を超えている。こうした日本における保育士不足の原因について、長時間労働や低賃金などが挙げられるが、保育士の離職を数多く引き起こしている本当の原因は人間関係のトラブルにある。

職場で働く人の95%が女性で、日々応対する保護者の多くも女性という環境。そして経験や思いが重視される環境。さらに保育のスキルは学べても、対人関係や課題解決のスキルを学ぶ機会がないまま現場に出て行かざるを得ない環境。こうしたことから、職場におけるいじめやハラスメントが日常化し、保育士が転職を繰り返すことも多く、保育士の47%がうつ病傾向に陥っているという数字も出ている。

今年10月に予定されている幼児教育・保育の無償化により、この傾向がさらに加速することが予想されるなかで、保育士のキャリアデザインをサポートするオンラインプラットフォーム「withせんせい」を考え出した。

「自分を知る」「気付く・学ぶ」「つながる」という3つの要素で、職場次第、人間関係次第ではなく、保育士が自分らしいキャリアを描くことをサポートする。信頼性の高い人間心理学に基づいた「せんせいエゴグラム」でパーソナリティ傾向と対人ストレスを診断。自分自身のパーソナリティ傾向を知ったうえで、その課題に合ったオンラインワークショップやコミュニティに自宅で参加できるエンパワーメントスペースを用意する。

一般論の寄せ集めではなく、「ワタシ」に合ったサービスが「withせんせい」の特徴で、悩みを抱えやすい若手保育士には、どうしたら自己表現がしやすくなるのかをテーマにした講座や、状況対応力を向上させるためのコミュニティなどへの参加を勧める。一連の診断からレコメンドまでをデータとして蓄積することでサービスの質の向上を図る。

これらのサービスを通じて、保育士が自己理解を深め、誇りを取り戻し、自分らしいキャリアを築いていくことに寄り添っていく。

質疑応答

オンラインワークショップには、あらかじめ映像化されたコンテンツが用意されていて、保育士個人がテーマに合わせて受講するという形式なのでしょうか?

時間を決め、オンラインかつリアルで参加できる講座と、リアルの講座に参加できない場合に動画を見ることで学んでいただけるコンテンツを準備しています。

在、就業していない保育士の多くが現場に復帰できるようになれば、幼児教育・保育の質も向上すると思いますが、そこはどう考えていますか?

保育士の有資格者116万人のうち、現在就業している人が全国で40万人弱で、待機児童の多い都市部で約11万人います。単純に数字の問題ではないと思うのですが、離職を経験し、もう現場に戻りたくないと思っている保育士の場合、人間関係トラブルや(子育て等と)両立ができないことを理由に挙げることが多いですね。それらの課題の解決を含めて保育士の現場復帰を支援していくことで、裾野が広がっていくと考えています。

受賞コメント

プレゼンの手応えはどうでしたか?

ほぼ、練習してきた通りにできたと思います。審査員の中にも頷きながら聞いて下さっている方が何人かいましたが、(私のプレゼンに)共感してくれている方がいることを嬉しく感じました。これまで「横浜ビジネスグランプリ」に何度か挑戦してきましたが、ファイナリストになれたことはもちろん、賞を取ることができたことは私にとって格別に嬉しいことでした。

最も訴えたかったことは何ですか?

子育てにおける「本気の環境作り」を横浜から発信していきたいという部分と、私自身がこの事業を始めた動機です。「なぜ保育士でもないのにこんなことに取り組んでいるのか」とよく聞かれるのですが、子どもたちに安定的な環境を提供することや、安定した大人が関わることがいかに大切かということを常々感じてきました。今回、この賞をいただいたことで、サービスの認知度を高めて協力者を増やし、弾みをつけて事業に取り組んでいきたいと思います。

一般部門

朝日マップ株式会社 遠藤 久資氏
http://www.asahimap.co.jp/

プレゼン内容

「OSMで歩くアーストレッキングナビ」

当社は住宅地図のデジタル化を手がけた関係で、カーナビと、通信を必要としない、自然の道を楽しむための地図ソフトウェア「山なび」を開発した実績がある。

プレゼンタイトルにある「OSM(オープンストリートマップ)」とは、道路地図などの地理情報データを誰でも利用できるよう、フリーの地理情報データを作成することを目的としたイギリス発祥のプロジェクト。世界で420万人が参加しており、データが毎日更新され、自由に地図アプリを作ることができる。「ポケモンGO」も「Googleマップ」の利用をやめてOSMに変更した。

警察庁の統計によれば、山岳遭難は登山(ハイキング等を含む)がトップで全体の約71%。様態別に見ると道迷いが約40%で、年齢別では55歳以上の遭難者が約72%に上っている。
「Googleマップ」では徒歩の道をほとんど案内することができない。たとえば横浜市の(根岸)森林公園を「Googleマップ」で検索すると、車道の道が案内されるが、OSMでは公園内の道もルート案内してくれる。

そこで、このOSMをベースとしたウォーキングナビの「アーストレッキングナビ」を商品化したいと考えた。登山・ハイキングでは道迷いを防ぐ安心ツールとして使え、活動的なシニアは日常のウォーキングのデータが収集できるツールとして活用でき、国内外の観光や旅行でアウトドアの道案内ができる地図ソフトとなっている。

SDカードにデータを格納するので通信ができなくても地図表示ができ、地面の傾斜で歩行負荷計算も可能で、音声案内で徒歩ルートのガイドを行えることが「アーストレッキングナビ」の特徴。さらに、津波を想定し、緊急時に高台に避難するためのルート案内を行う機能も付属している。販売店やネット通販で「アーストレッキング」を格納したSDカードを数千円以内で購入できる。

国内のウォーキング人口は約4500万人と過去20年で倍増し、登山・ハイキング人口も約1200万人に達しており、大きなニーズが見込まれる。途上国向けのAndroidスマートフォンも有望だ。観光サービス事業に携わる方との提携を望んでいる。

質疑応答

SDカードを販売する際、ラインナップとしてはどんなものを考えていますか?

「アーストレッキング」には日本の全データが入っています。海外の地図を販売するする時は、国ごとや、アメリカのように大きな国では、部分的に安価で地図を提供していく考えです。

一般部門

株式会社マステック 江本 雅文
http://www.masstech.jp/index.htm

プレゼン内容

「1家に1台 自給自足型ソーラー発電システム」

マステックは「技術の集合体」を意味する。10年にわたり蓄電池の研究を手がけてきたなかで、自給自足型ソーラー発電システム「マステックエナジー安心システム(M-EAS)」を開発した。「M-EAS」はソーラーパネルと、特許技術の長寿命蓄電池とマルチインバーターから構成される。

これからは売電ではなく、電気を「貯めて使う」時代になる。現在、日本の太陽光発電は停滞気味で、国内における発電電力量全体の約5.7%にすぎない。また、再生可能エネルギーで発電した電気を買い取る国の政策「固定価格買取制度(FIT)」も行き詰まり、太陽光で発電された買取価格も年々低下している。

こうしたなか、横浜市は「ゼロ・カーボン・ヨコハマ」を目指し、市内の温暖化対策やエネルギー施策を強化している。この実行計画に対応するには、行政主導ではなく民間主導で温暖化対策を進めることが大切で、「M-EAS」の5kwタイプで言えば、標準コストを100万円を下回る金額におさえ、5年以内に設備償却が可能になることが望ましい。

そこで「M-EAS」では売電をやめ、高価なパワコン(パワーコンディショナー)を廃止した。リチウムイオン電池も鉛蓄電池に変更し、バッテリーのコストを4分の1におさえている。特許技術により鉛蓄電池の長寿命化も実現したほか、システムを極力シンプルにしたこともコスト削減に寄与している。「M-EAS」は電気料金を大幅に削減でき、4年半で設備償却が可能で、非常時でも電力を十分に確保できる。

余剰電力買取制度がスタートした2009年に太陽光発電システムを設置し、売電を始めた設備の売電期間が2019年で満了する「2019年問題」も現実のものとなった。このように電力を売ることが難しくなっていることを背景に、「電力を貯めて使いたい」と望むユーザーが増えている。こうしたユーザーに「M-EAS」のマルチインバーターと長寿命鉛蓄電池を40万円程度で供給し、自給自足型のシステムに更新することが可能だ。

CO2の削減はわれわれにとって喫緊の課題であり、「M-EAS」の開発目的は、まさにここにある。皆さんにもこの分野への協力をぜひお願いしたい。

質疑応答

たとえば、毎月の電気代が1万5000円の一般家庭の場合、このシステムを導入することで、おおまかに電気代がどのぐらい安くなるのでしょうか?

実感としては、約3分の1から4分の1になると思って結構です。雨天が数日も続けば商用電力を使わざるを得ないので、その部分がロスになることは事実です。

一般部門

低糖質の焼き菓子工房・あんな 穴澤 百合子氏
https://www.a28.me/

プレゼン内容

「災害時グルテンフリー低糖質保存食品開発」

当店は横浜で唯一、小麦粉と砂糖を使わない低糖質焼き菓子の専門店。「低糖質でも家庭のおいしいおやつ」をコンセプトに、クッキーやケーキ、ミックス粉などの製造販売を手がけている。

災害が多発するわが国で、糖尿病患者は予備軍を合わせると1000万人に上ると言われている。ところが災害対策用の保存食品や救援物資は、糖質が高いものがほとんどで、糖尿病患者がそれらを口にすると、血糖値が大きく上昇してしまうという結果をもたらしている。そのため、災害時で薬がなくても安心して食べられ、常温で長期保存が可能な低糖質食品が必要とされている。

この事業を始めたきっかけは、息子が若年性の1型糖尿病と診断されたこと。食事やおやつなどで糖質を10グラム以上摂取する際、インスリン注射を行っている。食べ盛りの息子に、おやつぐらいはインスリン注射をしなくても食べられるようにしてあげたいという思いから、低糖質の焼き菓子を作り始めた。

主治医に焼き菓子を渡したところ、「必要とする人が大勢いると思うので、これを仕事にして販売してはどうか」と勧められた。工房の営業許可を取得するために訪れた区役所で、低糖質の食品は区役所に備蓄されていないことを知り、「自分で作るしかない」と決意した。

協力会社とともに製品開発を進め、昨年12月に、カップレトルトタイプの茶碗蒸しとババロアを完成させた。茶碗蒸しは通常の商品でも糖質が高くはないが、市販品はチルド状態のものが多いため、常温保存が可能なものを作り上げた。また、当店で焼き上げたおからのクッキーと、おからのお好み焼きの缶詰め加工も行っている。

このカップレトルトと缶詰めを、一般家庭や自治体、企業、病院などに備蓄用として販売していきたい。災害が多発するわが国にとって必要不可欠な低糖質の保存食品が実用化されることで、こうした問題が改善され、災害関連死の減少につながることを願っている。

質疑応答

今後、自治体や病院も含めて、こうした素晴らしい商品があるということを、どのように情報発信していきたいですか?

低糖質の焼き菓子は原材料費が高く、市販の菓子に比べて値段が高いので、商談会などに商品を持っていっても値段を大きく下げられてしまいます。卸販売のお話もいくつかいただきましが、最終的に価格が合わず成約に至りませんでした。そのため積極的に情報発信するよりむしろ、私のように(本人や家族が)困ってインターネットで検索し、当店のホームページにたどり着いたという人にとっては買いやすい価格帯に設定してあります。少しでも価格を安く、おいしいものを作るために開発に時間をかけていますが、1人で切り盛りしているので、なかなか営業に時間が割けない状況です。

一般部門

脇坂 健一郎氏

プレゼン内容

「『好きを定量化』出会いのサポートアプリ」

創業はこれからだが、「先端技術でさまざまなことを効率的にしたい」という事業への思いを抱いている。これまでIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を用いたソリューションを、主に製造業に提供してきたなかで、もっと多くの人に、身近にIoTやAIに触れていただきたいという思いが、今回のアプリ開発の背景にある。

現在、婚活ビジネスの市場規模は約2500億円に上ると言われている。たとえば婚活パーティーや合コンに出席した男女のなかで、「A子さんはとてもかわいい」と感じたB太君と、「B太さんは格好いい」と思ったA子さんがいたとする。ところが、初めて会う人同士はお互いに外見でしか判断できないので、相手が自分のことをどう思っているのかわからない。そのため、お互いに好意を持っていながら、それを知る手段がないことに着目した。

A子さんがB太君のことをとても好きなら、ドキドキするだろう。ウェアラブル端末で、その「ドキドキ」をセンシングして、独自開発のAIエンジンでそれを定量化。A君のスマートフォンに、「B子さんがあなたに好意を持っているようだ」と通知するシステムなどの開発を進めているが、こうした生体データの活用例はまだ少ない。

おもに婚活サービス事業者に向けて、生体データを用いたアプリケーションの機能を提供していく。婚活サービス事業者は、自社でアプリケーションを持っていることが多いが、そこに付加価値として当社のアプリケーションを追加することができるようになる。さらに「IoT婚活パーティー」や「AI婚活パーティー」といった新しいスタイルのイベントを開催することも可能だ。

加えて、婚活サービスを通じて知り合った男女がデートをした時などにセンシングした生体データを、デート終了後のコンサルティングに活用することもできる。

実際の利用シーンとしては、婚活パーティーや街コンなどの参加者に、自分のスマートフォンにアプリケーションをダウンロードしてもらい、ウェアラブル端末をつけていただき、生体データを収集することを考えている。一方、企業側にはサブスクリプション方式で、われわれのアプリケーションの機能を提供していく考えだ。

こうしたコアとなる事業を育てつつ、学習塾講師向けのサポートアプリの展開を始め、事業の関連多角化も進めながら、5年後、10年後に大きく成長できる企業を目指していきたい。

質疑応答

パーティーの参加者が、ウェアラブル端末を装着するタイミングや時間についてはどう考えていますか?

婚活パーティーの場合、平常時のデータがほしいので、パーティーが始まる前に、参加者が会場に集まった時点で端末をつけていただこうと考えています。パーティー開始後は、席順がスイッチするごとにデータを計測し、その変化量を見ていきます。

ごく一部ではあっても、個人の生体データを収集することに抵抗を感じる方もいると思いますが、どう対処していきますか?

婚活パーティーなどのイベントであれば、個人の生体データを収集することの趣旨をきちんと伝えることによって、趣旨に賛同していただける方に参加を限ることができると思います。また総合婚活サービス業で、デートの際にウェアラブル端末を装着していただく際などには、定性的・客観的に、あなたが相手の方をどう思っていたかを理解するうえで、生体データを活用することが有効だということをお伝えできれば、抵抗感を取り除くことが可能だと考えています。

学生部門

国士舘大学 大島 敬一郎氏

プレゼン内容

「C for C~肢体不自由者と古着~」

障害を気にせずおしゃれを楽しみたいという、肢体不自由者向けの医療服を作ることを提案する。

肢体不自由者について調べていくと、日本全国で体や心に障害がある人は936万人と、人口の7.6%にあたり、その半分以上の人が腕や足などの体の一部分に障害を持っていることがわかった。また医療服に関しては、高齢者向けのものが非常に多く、シンプルなデザインで、介護する側が作業しやすいように作られているものが多かった。

このように、おしゃれを楽しみたい肢体不自由者の方に寄り添った服がなかなかないことから、肢体不自由者でも1人で簡単に着られるおしゃれな服を販売する、肢体不自由者のための古着屋C for Cのビジネスプランを考えた。

「C for C」とは「Cloths for Cipples」の訳語で「肢体不自由者の衣服」という意味。なぜ古着なのかということだが、日本の医療服の廃棄量は年間100万トンに及び、その過程で発生する二酸化炭素により、地球環境の負荷の増大が懸念されるためだ。

そこでC for Cでは、障がい者福祉と地球環境の保護のどちらにも寄り添った衣服を提供していく。ターゲットは古着にあまり抵抗のない10~30代の肢体不自由者。最終的にはどの年代にもおしゃれを楽しんでいただける衣服を作りたい。

ホームページで注文申請を受け付け、申請者の自宅に訪問してオーダー服の希望(のヒヤリング)および採寸・提案を行い、製作・加工、配送までを手がける。

一方、ホームページで古着の寄付を募り、こちらから配送する専用の段ボール箱に古着を入れて送付していただく。届いた衣服をわれわれが加工し肢体不自由者の顧客に提供する。加工できない衣服はユニセフに寄付する。アパレル企業から型落ちした商品や、販売する予定のなくなった商品を無料で提供していただき、加工を施したうえで、C for Cとアパレル企業のダブルネームで販売を行う。

販売促進として、チラシ配布やSNSによる情報発信などのほか、イベント開催を通じて認知をはかる。横浜市でC for Cを利用していただいた方を対象に、横浜にゆかりのある著名人と一緒にランウェイを歩いていただく「C for Cファッションショー」も開催。肢体不自由者の方ができなかったことを可能にして夢を広げ、メディア露出や地域活性化にもつなげたい。

質疑応答

この事業をやりたいと考えた動機や思いを聞かせて下さい。

私の小学校時代の友人に障害をもつ人がいたのですが、自分に合った服がなくて困っていました。長袖の服だと、袖の先のほうを結んで着ているため、そこが引っかかって危険な目に遭うこともありました。そこで(袖の長さや服のサイズなどを)自分に合わせることができ、なおかつ自分が着たい服を着られるようになれば嬉しいのではないかと思い、この事業を考えました。

学生部門

東京理科大学 水野 勇望氏

プレゼン内容

「不眠大国日本の睡眠不足を改善」

日本では、普段の睡眠時間が不足している人が約40%に上ると言われている。睡眠不足は仕事のパフォーマンスや思考力の低下だけでなく、重大な事故やミスを招く怖れがある。そこで、睡眠不足に悩む人たちが健康に暮らしていけるような商品開発を行っている。

もともと自分自身が、睡眠不足の悩みを抱えていた。働きながら学校に通うなかで、夜の睡眠時間をなかなか確保することができずにいた。そこで、新しい仮眠のあり方を提案したい。

仮眠には、夜の睡眠不足から生じる問題を改善する効果があることが科学的にも検証されている。また「働き方改革」の一環などとして、企業や行政が仮眠を推奨する動きも起こっている。そのため今後、仮眠の質を高める技術に対するニーズが高まっていくと考えられる。

そこで、仮眠の質を高めるアイテムの提供を行っていく。ターゲットは首都圏在住のサラリーマン。首都圏在住のサラリーマンは、通勤時間が長い人ほど夜の睡眠時間が短く、3人に1人が移動中に仮眠を取ると言われている。

現在開発しているのが「バックトップピロー」という、枕とリュックが一体になっている商品。普段はリュックとして機能するが、クッションのついた部分を上側に折り返し、そこに顎を乗せて、電車内などで仮眠を取ることができる。現在、意匠権および特許権の出願中。

店頭販売とEC販売により、年間販売目標1万個の達成を目指す。今年5月に立ち上げる予定のクラウドファンディングで結果が得られ、ユーザーテストを通じて商品価値があると判断した場合、一般販売につなげていく。生産を委託する協力会社はすでに確保しており、販売チャンネルについても、大手百貨店などで小ロットから取り扱いを行う予定で、ベンチャーキャピタルから資金面の支援を得るべく交渉中だ。

質疑応答

小ロットから販売可能ということは、今後さまざまな商品のバリエーションが期待できるということですね?

今回販売する予定の商品は黒一色ですが、今後はセカンドプロダクトとして、女性向けのデザインを施したリュックを開発していこうと考えています。