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上海事務所の中国現地リポート

貴州省貴陽市・貴安新区 現地レポート

1 概要
貴州省は中国の西南部に位置し、四川省や重慶市の南、雲南省の東にあたる。台湾と同程度の緯度であるが、 標高1,000メートル程度の高原地帯のため、極端な暑さや寒さは無い。伝統産業はマオタイ酒の特産であるほか、 豊富な水量を持つ河川からの水力発電や、石炭などの資源も多いが、1人あたりのGDPでは3万元程度(2015年)と、 全中国平均の半分にも満たない。その一方、GDP伸び率は2014年に比べ10.7%の伸びと、全国トップクラスである。 この成長の要因のひとつがビッグデータなどの情報産業である。
 貴州省は中国政府の定めた国家級の ビッグデータ発展モデル区であり、省都の貴陽市や、国家級新区として設立された貴安新区などを中心に ビッグデータ産業などを誘致している。2015年に初開催され、今年で第2回となる貴陽国際ビッグデータ産業博覧会 (www.bigdata-expo.org)に当事務所が出展するとともに、 貴陽市と貴安新区を視察し、日本企業にとってのビジネスの可能性について探った。

2 視察先一覧

  • 貴陽国際ビッグデータ産業博覧会
  • 貴州博大智能終端科技有限公司
  • メタノールタクシー用ガソリンスタンド
  • 吉利汽車 完成車工場建設現場
  • 貴安新区都市規画館
  • 中国移動 ビッグデータセンター
  • 貴安総合保税区
  • フォックスコン 貴安新区工場(車内より)
  • 中国鉄建 貴安新区共同溝

3 貴陽国際ビッグデータ産業博覧会
本博覧会は貴州省政府に加え、今年から中国の中央政府主催の国家級博覧会となった。 5月25日(水)~29(日)の5日間、貴陽市の貴陽国際会議展覧中心で開催された。 公式ホームページによると、 300社を超える企業が出展し、9万人近い来場者があった。中国国外からの出展は横浜市以外ではUNIDO、 英国大使館、韓国ビッグデータ協会などである。また、同時開催された中国ビッグデータサミットには、 李克強総理も参加した。
以下に写真とともに紹介している大手企業のほかにもビッグデータ、 システム系企業が多く、貴州省だけでなく上海など他の省からの出展社も多かった。創業関連では貴州ビッグデータ 産業インキュベーターは2016年3月に開業し、現在4社が入居。宇宙開発などを行う中国航天科技集団の遵義 クラウド衛星通信ビッグデータセンターも出展していた。
来場者の人気はテンセントなどの大手企業が 展示するガジェットのサンプルであり、必ずしもビッグデータの産業化に関するものではなかったようだ。

aribaba.jpg       アリババブースに集まる来場者

4 貴州博大智能終端科技有限公司
同社はキャッシュレスの自動販売機や、タクシーに搭載する情報機器を製造している。
同社総経理によると、自販機は日本では300万台の設置、日本では人口30人に対し1台の割合に対し、 中国ではまだ10万台である。同社自販機の特徴は、支払い方法に現金を使うのではなく、銀聯カード、アリペイ等 で支払う点である。このような電子決済の推進は国が推し進めていることである。これにより、現金を扱う必要が 無くなるので機械の管理が容易になる。自販機であれば、24時間のサービス提供が可能となり顧客に対するサービス向上となる。
さらに、各自販機での販売情報がリアルタイムで集められる。ビッグデータの要件は、時間、場所、行為、端末設備の4つが そろっていることだ。支払い時に現金ではなく電子決済としているため、銀行カードの情報から、顧客の属性をとれるため これを活用することができる。
また、テレビ電話にて薬剤師と相談をしながら購入する薬を決められるテレビ電話相談付きの医薬品自販機もある。
タクシーに搭載する情報機器について、貴陽市全体でタクシー7,000台のうち、6,000台は当社のインテリジェント システムが搭載済み、2016年中に残りのタクシーにも搭載完了予定。現在の位置、どの方向にどのくらいの速さで移動しているか、 実車の有無、これまでの稼働状況などがひとめでわかる。これにより、より適切な配置を行うなどにより、 より収益の上がる営業が可能となる。伝統産業に新しい産業モデルを創造することが当社の行っていることだ。

5 メタノールタクシー用ガソリンスタンド視察
メタノールは石炭から安価に生成できるため、貴州省をはじめ、炭鉱をもつ地域などでメタノール自動車への活用の 取り組みが進んでいる。中国国内各地で試験的に実用化が進んでいる。メタノールとガソリンの混合比により分類されるが、 当地ではM100と呼ばれるメタノール100%の燃料を使用している。吉利自動車製300台程度のメタノールタクシーが稼働している。

6 吉利汽車 完成車工場建設現場
吉利汽車が貴陽市烏当区に建設中の完成車工場建設現場を視察した。同地は貴陽市政府から西に10キロ強の場所に位置し、 2016年5月時点では造成中である。面積は60万平方メートル、ミニバン、メタノール車を主力として年間30万台という 同社最大の工場である。同社傘下のボルボの中国市場販売品は、当工場で製造することとなる。当社にとって当工場は 中核的な規模であるだけでなく、オートメーション化など先進的な生産工程とすることも特徴である。プレス、 溶接工程を中心にオートメーション化を進める。同地への立地の要因としては、1、政府の中西部開発に対し同社が 積極的にかかわっていく社会的責任がある。2、貴陽市を中心とした中国中西部での完成車の市場開拓のため。 3、貴州省政府、貴陽市政府の誘致の3点である。現在開発中の地域に加え、120万平方メートルの土地を確保している。 これらはパーツ生産と研究開発のためのエリアだ。

7 貴安新区都市規画館
map.jpg 貴安新区の都市計画と発展について紹介する展示がある。2015年6月17日 習近平総書記が貴安電子情報産業園の中国電信クラウドデータセンター視察。 2015年2月14日 李国強総理が貴安中心区視察。
貴安新区は貴州省の貴陽市の一部と安順市の一部をあわせて 貴安新区という新たな貴州省直轄の自治体としたものであり、2015年8月1日より、「300日活動」を開始。域内への 投資100億元、新規重大プロジェクト100個などを目標としている。3年で人口50万人・域内総生産300億元、 2020年までの5年で人口80万人域内総生産700億元、10年で面積150平方キロに及ぶ新たな都市を完成させる計画である。
また、新たな都市を開発するというだけでなく、雨水を地下に浸透させて水害を防ぎ、水資源を有効に活用する スポンジシティなど、環境に配慮したまちづくりを進めている。

8 中国移動 ビッグデータセンター
model.jpg 中国移動は中国最大の携帯電話事業者であると同時に、データセンター事業も行っている。データセンターを貴陽市に 建設中である。同センターは貴陽市の新市街から数キロの場所に位置しており、同じ携帯電話事業者である中国連通、 中国電信のデータセンターも近辺に位置している。四季を通じて外気温の変化が少ないことがデータセンターに適している とのこと。現在はまだ稼働していないが、同センターの説明を行うための施設が稼働している。館内にはデータセンターの 模型、概要などとともに、ビッグデータを活用した応用事例などが展示されている。具体的には、貴陽市の学校に所属する 生徒の1人ひとりの登下校を管理して防犯などに役立てたり、家庭の電力使用量をリアルタイムで把握するなどの仕組みで ある。なお、このようなシステムを企画し開発しているメンバーの開発場所はどこでも可能であり、必ずしも貴陽市にいる わけではない。

9 貴安総合保税区
同保税区は、貴安新区内に位置しており、2015年に設置許可がおりた貴州省で2番目の総合保税区で、税関や保税倉庫などを 備えている。計画面積は2.2平方キロメートルである。同保税区によると、陸送だけでなく30キロの距離に位置する貴陽空港 などを活用した物流を想定しているという。

10 フォックスコン 貴安新区工場(車内より視察)
従業員1万人規模の工場として、スマートフォンなどの製造を開始する予定。

11 中国鉄建 貴安新区共同溝
共同溝とは、水道、ガス、電気、通信など複数のライフラインをまとめて地下に埋設するための設備であり、 道路を掘り返さずにメンテナンスできるようになるという利点がある。貴安新区では幹線道路の地下を利用して、 全長40キロメートル程度の共同溝の設置を計画している。総投資額はPPP方式を活用して30億元を投資する。 方式はガス、電気・水道・通信、電力の3つに分かれている三室式である。コントロールセンターから各地の状況を監視・ 制御できるとともに、携帯電話の専用アプリからも制御可能となっている。

12 まとめ
中国では地域による発展の格差が問題となっており、いかに中西部の開発を行うかという点は中央政府にとって、大きな 課題である。この課題の解決のための大きな政策の一つが貴州省に対する政策であり、具体的には貴安新区国家級新区としての指定や、ビッグデータ産業の誘致などである。これらの政策が中国の他地域を上回る10.7%という、2015年のGDPの成長に結びついていると思われる。
 では、彼らの言うビッグデータ産業の具体的な内容は何かというと、大きく2つに分けられる。一つは大規模なデータをサーバー内に物理的に保存し運用するデータセンターの建設、もう一つはデータを活用したソリューション開発である。
 データセンターはすでに中国の3大携帯電話事業者である中国移動、中国聯通、中国電信やファーウェイ、フォックスコンなどが設置を決めており、この要因は政府が強力に誘致しているだけでなく、貴州省が豊富な水力を活用した水力発電による電力の安定供給や、四季を通じて安定した気温、特に夏季に高温にならないことが、データセンターに適した立地条件であると思われる。
 ソリューション開発については、さまざまな応用が考えられるが、例えば今回視察したタクシーの情報管理などは、貴陽市でタクシー7,000台、人口450万人と日本の都市に比べると十分大規模だが、中国国内では120位程度であり、試験的に展開するには適している規模といえそうだ。
 しかし、データセンターの運営自体はそれほどの雇用があるとは思えず、またデータセンター管理、ソリューション開発ともデータの保管場所が貴州省であっても管理者や開発者が貴州省にいる必要はなく、これらの部門については各政府の主導する当該産業の誘致や創業支援、当地の大学での人材開発などの成果いかんであり、現時点では未知数であるように思われる。
 一方でデータセンター建設や吉利汽車の完成車工場の建設、貴安新区の建設などは実物としての投資が確実に行われており、これらが貴州省の経済成長の要因のひとつのようだ。横浜企業にとっては、この分野で自社の強みを活かすことができれば、ビジネスチャンスがあると感じた。例えば、メタノール自動車はガソリンやディーゼルに比べ、大きな改造が必要なわけではないが、腐食対策が必要であることが普及を妨げているとのことである。通常の自動車部品にとどまらず、腐食対策のための精度や技術を持つ企業は特に吉利汽車からは歓迎されるかもしれない。また、環境に配慮した街づくりを急ピッチで進めているため、この分野での技術を持った企業にとってもビジネスチャンスがあると思われる。

(2016年8月)

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