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中国現地リポート

日本から中国への越境Eコマースの現場視察レポート

1 サマリ
 本稿では、 消費者市場としての中国に日本からネットショップを通じてアプローチするための越境Eコマースについて、 軽減税率などを含めた基本的な仕組みと、その中心的な拠点の一つである杭州市の状況などについて報告する。

2 越境Eコマースとは
  中国国内の経済成長などにより、消費地としての中国に注目が集まっているが、日本製品を中国国内で販売する ためには中国への輸入の際の関税や、流通コストなどの面で日本での販売と比べ、価格が高くなりがちであった。 一方、個人が輸入した場合には一定の条件を満たすと税の軽減などがある。日本のオンラインショップから 直接購入 することも人気となっており、中国消費者向けオンラインショップを開設し、受注ごとに日本から 中国へ商品を 出荷する事業者もある。これらは直送型越境EC と呼ばれている。しかし、この方法では日本から 中国までのクー リエサービス(国際宅配便)などを利用するもので、輸送コストが高くなりがちであった。
 2014 年より、 特定の電子ショッピングモール(税関システムと連動したモール)は、中国国内の 保税区と呼ばれる区域を活用す ることができることとなった。日本からまとまった単位の商品を中国へ輸送し、 輸入通関前の保税区に在庫を置き、 ネットショップでの受注都度、個人輸入として保税区から消費者まで 商品を届けるという形である。これにより、 個別配送の運送費は国内のみとなり、かつ軽減税率での購入が できることとなり、このスキームが注目を集めている。 本稿ではこの保税区への在庫による日本から中国への 販売を越境EC と呼ぶこととする。
 中国国内の輸入業者が海外からの通常に輸入する場合、 中国の関税、増値税、消費税が課税される。 うち、中国の消費税は特定のぜいたく品などに課税されるもので、 日本の物品税に相当する。品目(HS コード) ごとの税率については、下記サイトで検索が可能であるが、 関税、増値税、消費税の合計で30~70%程度である。
※税関総合情報サイト(中文)  http://www.china-customs.com/customs-tax/
 一方、越境EC の場合、 通常輸入の課税(関税、増値税、消費税)はなく、その代わりに行郵税(こうゆうぜい)と呼ばれる税のみを支払う。行郵税の税率は食品・飲料10%、酒類50%、衣類20%、革製衣類・靴10%、化粧品50%などであり、 しかも1つの注文あたりの税額が50 元以内の場合、課税が免除される。このため、行郵税率10%の品目の場合、 購入価格が500 元に満たない場合は非課税となる。ただし、行郵税の対象となるのは日本からの場合1,000 元/回以内であり、 これを上回ると関税、増値税等の負担が必要となる。
 越境ECの利点としては、上記の税負担の違い、運送コストの 違い以外に、中国国内での法人設立が必要ないこと、中国国内での販売のための認可や表示などについての基準が通常の 中国国内販売ほど厳格でないことなども挙げられる。

3 杭州越境EC倉庫視察
sh201603-1.jpg  2016年3月2日に、(株)アルプス物流が開催した杭州越境EC倉庫の見学会に参加した。 アルプス物流は日系企業でありながら、倉庫、物流などを中国国内でも自社運営している稀有な企業であるが、 越境EC分野でも取り組みを始めている。
 訪問した浙江省杭州市は、2013年に越境EC実験区として選定 されている。今回は杭州経済技術加工区内の中国跨境貿易電子商務産業園を訪問した。同産業園では、 2014年9月に初めてこの越境ECスキームによる出荷を行い、現在は10,000アイテム(SKU:最小管理単位) 程度の商品が扱われている。世界最大の電子ショッピングモール企業であり、中国EC市場で80%のシェアを 持つアリババグループは杭州市が本拠地である。同加工区によると、同加工区はアリババグループと提携 していることなどから、越境ECに関する全国のルールは杭州の実態を見て決定されていると当地の優位性を 語っていた。
 越境ECを行う上で必須となるのが、税関システムと連動したプラットフォーム システムの使用である。このプラットフォームを使うことで、保税区から商品自体を先に出荷した後で、 通関手続きのみを後で行うことが認められている。商品の販売を行う事業者は、このプラットフォームを 使用できるアリババの越境ECモール(天猫国際 http://www.tmall.hk) で出店したり、独自サイトで販売してアルプス物流に対して注文情報を送信したりすることでこのスキーム を活用することが可能である。
 アリババグループの倉庫では、美容関係商品、食品などが在庫され ている倉庫内でカートを押しながらピッキングを行っていた。商品の流れとしては、海外からの荷受け、 倉庫内作業(出荷単位にばらしてバーコードシールを貼るなど)、入庫、受注に応じてピッキング、検品、 パッキングなどである。ピッキング等の作業は手元のバーコードスキャナに表示される情報を使って実施 しており、紙のピッキングリスト等は使用していない。
sh201603-2.jpg  次にアルプス物流倉庫を視察、こちらは 日本製のシャンプーなどが在庫されており、すでに当日の出荷は完了していた。同社によると、この事業は これから拡大を見込んでいるところであり、倉庫自体も顧客ニーズにより拡張が可能とのことである。 また、これまで述べてきた保税区在庫型の越境ECの許認可を得ることが直送型越境ECを取り扱うための 条件となっており、同社でも直送型越境ECの取り扱いが可能である。
 なお、越境ECのスキームを 取らないネットショップ等と直送型越境ECの違いは次のとおりである。日本国内サイト等で中国消費者から の注文を受け、EMS等で商品を発送する方法はこれまでから使われてきたが、この方法では中国側税関での 通関手続きを行う場合、商品到着までに時間がかかったり、通関手続きを行うまで税額が確定しなかったり ということが起こりうる。これに対し、直送型越境ECではあらかじめ取り扱い品目を税関に届け出ている ことから、税額が確定することはもとより、海外から荷受け次第、消費者に発送することが可能となっている。
 これまではEMSでの発送について、通関手続きを求められることが少なかったことから直送型越境ECを わざわざ行う利点は少ないと思うかもしれないが、中国では越境ECの進展や「爆買いツアー」の流行などに伴い 輸入通関手続きの厳格化が進むと思われるため、現状で日本から中国消費者へ直接発送している事業者については、 直送型越境ECへの対応が求められるだろう。

まとめ
  前述の天猫国際のサイトを見ると明らかだが、現状は産業園の越境EC全体で10,000種類と、日本の コンビニエンスストアの数倍程度のアイテム数しかなく、また価格も安くないものもあるため、中国の 消費者に広く受け入れられるというよりは、まだ特定のアイテムを買うためには使えるというのが現在の 越境ECの位置づけであるように思える。しかし、中国政府も今後この分野について拡大していくための制度を 整備していっていること、消費者も海外での価格についての知識を持っていることから、越境ECはますます増加 していくことと思われる。
 一方で、本スキームを活用するためには多くの事業者の連携が必要となる。
●プラットフォームシステム対応物流・倉庫・通関業者
●ネットショップ運営業者
●ショッピングモール
●決済サービス業者
●中国国内運送業者
一般には、上記のような 事業者との連携が必要である。さらに、中国の通関などの当局の制度や運用の変更も頻繁にあることが想定されるため、 プラットフォームシステム対応物流・倉庫・通関業者については中国側の情報を持っており、かつスムーズに コミュニケーションできるパートナーを探すことが必須である。
 特に、このスキームの重要なカギと なる行郵税について、2016年4月以降に改正されるなどとの話もあり、常に新しい情報を確認すべきである。

(2016年3月)

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